レジーのブログ(旧)

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こちらのサイトについては近々閉鎖することになると思いますので、ブックマーク登録いただいている方は変更をお願いいたします。
もし周囲にこのブログを読んでくださってる方がいらっしゃる場合は、適宜周知していただけますと幸いです。

今後の作業スケジュールなどについてはレジーのポータルにも掲載すると思いますので、合わせてご確認ください。

引き続きご愛顧のほどよろしくお願いいたします。
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激動の2013年を経て、パスピエはどこへ向かうのか

■新作に感じる『わたし開花したわ』の面影

レジー「マンウィズが表紙のMUSICA4月号にて、パスピエ『MATATABISTEP/あの青と青と青』、Cocco『パ・ド・ブレ』のレビューを書かせていただきました」



司会者「パスピエに関してはちょうど1年前くらいに『フィーバー』のレビューをクイックジャパンに書きました」



レジー「この1年で自分の状況もパスピエの状況もだいぶ変わったなあ」

司会者「パスピエについてはブログの初期から継続的にウォッチしているバンドです」

パスピエのこと「ポスト相対性理論」っていうな
だからパスピエのこと「ポスト相対性理論」っていうなって
パスピエ『フィーバー』リリースにあたってインタビューを敢行しました
『演出家出演』発売記念 パスピエの「ネクストブレイク前史」を振り返る

レジー「うん。で、新譜すごくいいよパスピエ」





司会者「今回のレビューでは新作の音について「原点回帰」という言葉を使っていましたね」

レジー「個人的にはこの言葉がぴったりくる。初めてタワレコの試聴機で聴いたときのことを思い出した」

司会者「表題曲2曲以外にも、『万華鏡』と電気グルーヴ『Shangri-La』のカバーが収録されてます」

レジー「どれも聴きごたえがすごくて、シングルというよりミニアルバムですな。表題曲は対照的な2曲で面白かった。ライブ仕様と言っていいであろう『MATATABISTEP』と、「聴かせる」感じの『あの青と青と青』。最初に『あの青と青と青』ってタイトル見た時は最近のギターバンドにありがちな疾走感系の曲かと思ったんだけど全然違った。心地よく裏切られました」

司会者「『あの青と青と青』についてはバンドとしてもチャレンジだったみたいですね」

“あの青と青と青”は、とにかく壮大な曲を作ろうと思って。それは自分から大胡田への挑戦でもあったんです。曲を通して聴いたときのストーリー性が、ショートムービーを見た時の感覚に近いものが作りたかったんです。今のポップスにおいて大事なのはフック、ギミックだとも思っていて、そのふたつが相いれないなあということに悩みながら、ずっと作っていました。
(MUSICA4月号)


レジー「成田さんがルーツとしてあげてるおしゃれテレビってバンドがありますが、そのあたりの感触に近いものを感じました」



司会者「なるほど」

レジー「「フック、ギミック」がただ盛り上げるためというよりは、心の内面に渦巻いていくための装置として使われている感じね。で、この曲があるから次の『万華鏡』の爽快なポップ感がかなり際立つ。『万華鏡』の鍵盤さばきはちょっとすごいね。ライブでやるのかな」

司会者「最後の『Shangri-La』のカバーについてはいかがですか」

レジー「個人的には原曲が大好きであの時点で十分に完成されてると思ってて、カバーネタとしてもかなり大ネタなのでちょっと悪手のような気もしてるんですが」



司会者「最近よくあるカバーというか、話題作りのためみたいに思う人もいるかもですね」

レジー「そうねえ。ただインタビューを見ると必然性を持ってやってるみたいね」

2012年に初めてWIRE見に行った時の衝撃が大きくて。去年初めてカヴァーをやったんですが、次にカヴァーをやるなら電グルがいいなと思ってました。電グルは、まず卓球さんワークスのサウンド感にいつもびっくりしていて。・・・すごいストイックだと思うんです。WIRE見に行った時も感覚がずば抜けてて。それが瀧さんとの電気グルーヴになることによって、一気にショーになっていって。純粋な音楽をエンターテイメントで体現してる!って思うアーティストです。
(MUSICA4月号)


司会者「「純粋な音楽をエンターテイメントで体現」っていいですね」

レジー「うん。『わたし開花したわ』を初めて聴いたとき、まさにこういう印象を持ったんだよなあ。ギターバンドフォーマットで、でも鍵盤の音が歪に突出してて、それが読後感をやたらとポップなものにしてるっていうか。「ちょっと変、でも食べやすい」みたいな中毒性。まさに音そのものがエンターテイメントになってた。で、MUSICAのレビューに「原点回帰」って言葉を使ったことにつながるんですけど、今回の新譜は『わたし開花したわ』が持ってた「歪ゆえのポップさ」がすごくあるように感じていて。楽曲で言うと、たとえば『MATATABISTEP』は『電波ジャック』、『あの青と青と青』は『夕焼けは命の海』、『万華鏡』は『真夜中のランデブー』の正当進化というか」

司会者「『わたし開花したわ』以降にもたくさんリリースはありましたが、今作は『わたし開花したわ』と地続きなんですかね」

レジー「そういう意識を持って作ったかは不明だけど、アウトプットとしてそうなってる気がした。今回のシングルの音って「流行りの邦ロックバンドの音」って範疇からははみ出してるような気がするし、バンドとしてそういう括りみたいなものを意識する前のインスピレーションを大事にして作った作品なのかなというのがばくっとした印象」

司会者「もしそうだとした場合、ある意味で「流行りの邦ロックバンド」の役割をまっとうした2013年のアクションはバンドとしてどう位置づけてるんですかね」

レジー「去年のパスピエはまさに快進撃!だったけど、やっぱりその中で得たものもあれば失ったものもあったような気がしていて。支持が広がった段階で、2013年のいろんなことをリセットというか、一旦仕切り直したうえで「もう一度パスピエを始めていこう」って意思の表れが今回のシングルなんじゃないかなと思いました。では、次にその「2013年のいろんなこと」についての話を」


■2013年のブレイクと「セカオワ・シンドローム」


司会者「2013年のパスピエのブレイクは語るまでもないですね。あっという間にライブのチケットが取れないバンドになりました」

レジー「ポスト相対性理論なんて言われてたのももはや懐かしいよね。今となってはヴィレッジヴァンガードよりもタワレコの方が似合うバンドになった。ものすごく雑な分け方すると「サブカル」から「邦ロック」へ、みたいな」

司会者「支持層が変わった感じはありますよね」

レジー「象徴的な事象として、「好きなバンドかぶったらRT」ってフォーマットのツイートでパスピエが出てくるケースがここ1年で圧倒的に増えたね」

司会者「あー」

レジー「そういう文化圏の人たちが一気に流れてきた。そりゃあれだけポップでノリも良い音楽をやってればそうなって然るべきだし、今のマーケットで基盤を固めるにはそのあたりをとらないといけないってのは明白なんだけど、個人的な印象としては支持層の変わるスピードが思ってた以上に早かったです」

司会者「ライブの雰囲気も大きく変わりましたね」

レジー「そうね。7月のリキッドだったと思うけど、オープニングSEで手拍子が出た時はさすがにびっくりした。モッシュしながら聴く音楽だとも到底思えないけどステージ前は最近そんな感じになってるよね。12月のブリッツで前の方で見てたらペットボトルで水撒いてる人がいたり。パスピエのライブで服が濡れるとは思ってもみなかった。で、僕はこの状況を勝手に「セカオワ・シンドローム」って呼んでるんですけど」

司会者「「セカオワ・シンドローム」とは」

レジー「以前書いた記事から引用します

レジー「(前略)たとえば、“世界の終わり”というバンドのファンと“SEKAI NO OWARI”というバンドのファンって、きれいに入れ替わってると思うんですよね。それはもう鮮やかなくらいに」

司会者「「『EARTH』は好きだったけど今はね・・・」って人すごい多いですよね」

レジー「うん。僕もそのクチなんですけど。で、そういう形で一度離れたファンってたぶん戻ってこない。(後略)」


司会者「ブレイクと支持の拡大に伴うファン層の入れ替わり、みたいな話ですかね」

レジー「イノベーター理論で言うところのイノベーター・アーリーアダプターがブレイクを機に一気に離れていく感じというか。もちろん尖った人だけに聴いてもらっても世の中的なインパクトは持ちえないから間口を広げる方向に行くこと自体は100%正しいと思うんだけど、その過程で「現象関係なく早めにそのバンドの魅力に気づいたファン」が剥がされていくってのはあんまり幸福なプロセスじゃないような気がしていて」

司会者「「あのバンド売れちゃって変わったな」みたいな話はセカオワに限らずどこの世界でもあるんじゃないですかね」

レジー「それはそうなんだけどね、セカオワに関しては「古参ファンの思い込み」みたいなことではなくて明確にターゲットというか届けたい層を変えてるんじゃないかなあ。で、そういう動きにリスナー側もビビッドに反応してると。その結果として、かなり大きな動員力やセールスパワーを持ったけど一方では「セカオワwww」みたいな感じの声も増えてきてますよね」

司会者「パスピエもその「セカオワ・シンドローム」になってるんじゃないか、ってことですか」

レジー「僕は『演出家出演』ってアルバムすごく好きなんだけど、どうにも100%乗り切れなかった部分があって年間ベストでも10枚に入れず次点にしました。何がピンと来なかったかというと、なんとなく「やりすぎなマーケットイン」の姿勢を感じたんだよね。「ポスト相対性理論」というレッテルから脱却するためにライブ感を意識したという中で、その「意識の仕方」っていうのが「最近の「邦ロックファン」が喜ぶライブの景色に寄せる」こととニアリーイコールになっていたように思えて。その取り組みの結果として『S.S』とか『はいからさん』とか強烈にライブで盛り上がるんだけど、その盛り上がりを支えてるのは「なんでもいいから盛り上がりたいぜ!」って感じの人たち、みたいな。間口を広げていく中で、「盛り上がり至上主義」的空気になじめない人たちが結果として離れていくようなムードになってる気がします。そういう層だけが聴くバンドではないと僕は思ってるんだけど、そんな空気が支配的になりつつあるんじゃないかなあ」



司会者「ライブではメンバーが手拍子をあおったりしてそういう空気を率先して作ってる感じもあります」

レジー「うん。ただ、ほんとに今の状況をバンドが求めてるかどうかってのも正直よくわからないんだよね。JAPANのインタビューを抜粋します。最近はお客さんをあおったりしますよね、という流れの中での発言」

成田「でも、いわゆる定石じゃないですけど、オールドスクールな乗せ方ってあるじゃないですか。それにみんなすごい葛藤を持ってて(笑)」

大胡田「「手拍子しろ」って、「じゃあちょっと、やってみる」って試したりね(笑)。私あんまり物事を考えないけど、最近それはよく考えてますね」
(ROCKIN’ON JAPAN 7月号)


司会者「微妙な感じですね」

レジー「そもそもこのインタビュー自体まとめ方が相当いまいちで文脈が読み取りづらいっていう難点はあるんだけど、とりあえずは手拍子とかでみんなを盛り上げたい!って心から思ってるわけではなさそうなことは伝わってきます。これは『演出家出演』が出るタイミングでのインタビューだから今の心境がどうかはわからないけど、ライブで盛り上がれる曲、ロキノン的言い回しだと「機能的な楽曲」を鳴らしまくってる一方で、それによって生み出されている景色には何となくの引っかかりみたいなものを感じているってことですよね」

司会者「自分たちのオリジナルな立ち位置を作ろうとする中で、こういう引き裂かれたシチュエーションが生まれたのがパスピエの2013年だったと」

レジー「と、言えるのではないか、って感じでしょうか。あくまでもこちらの思い込みに過ぎませんが。これってブレイクしたバンドならではの痛みだと思うけど、長い目で考えるとかなり綱渡りの状況になってるような気がします。今の方向だとおそらく消費されるスピードは上がるし、それこそセカオワ並みに相当でかい支持基盤を作らないとあっという間に食い散らかされちゃうと思う。で、最初の方の「リセット」って話は、こういう状況を一回まっさらにして「ちゃんと音楽を届ける」というところに行きたいってのが今のバンドのスタンスなんじゃないかなってことなんですが。先日パスピエが出演したalternative tokyoに参加していろいろと感じるものがありました」


■alternative tokyoにおける「久々のアウェー」、そしてクラムボンの「いま」とパスピエの「あした」


司会者「3月15日にスタジオコーストで行われたalternative tokyoのトップバッターで出演したパスピエですが、最近のライブからは考えられないくらい人が少なかったですね。それ以降のアクトではパスピエ以上にフロアが埋まってましたし、スルーした方が多かったようです」

レジー「出演発表も遅かったしね。ただ、他の出演者のファンが「パスピエ見てみようかな」って集まってもほんとはいいわけで。そうなってないのが悲しかった」

司会者「メインステージはパスピエ以降は七尾旅人、People In The Box、イースタンユース、クラムボンが出演しました。現状ではファン層はあまりかぶってないんですかね」

レジー「少なくとも2年くらい前にはこの並びがしっくりくるバンドになる可能性も広がってたのになあとか考えてしまった。それに加えて、バンド側からの告知が妙に少なかったのが気になりました」

司会者「普段はマメにイベント出演の情報ツイートしたりしてるのにね」

レジー「意図的にファンのいないところでやろうとしたのかなとか勘ぐってしまう」

司会者「演奏したのは『シネマ』『とおりゃんせ』『ワールドエンド』『最終電車』の4曲です」

レジー「『フィーバー』とか『はいからさん』みたいなノリ系の曲を外してるんだよね。で、MCもこの環境をすごく意識したもので」




司会者「自分たちのファンはあんまりいないことを自覚してのMCに聞こえます」

レジー「うん。MUSICAのレビュー用に初期パスピエっぽい匂いのする新作の音を聴いて、それでこの日の人少ない状態でのパスピエを見て、すごく「リセット」って感じがしたんだよね。去年の狂騒から逃れて、先入観のないであろう場所で自分たちの楽曲を鳴らすってことがバンドにとってすごく大事だったんじゃないかなあ。で、このイベントのトリだったクラムボンがマジで素晴らしかったんだけど。佐藤伸治さん命日の『ナイトクルージング』も沁みたし、とにかくこの人たちのライブはほんとに雰囲気がいいんだよね」

司会者「音楽が真ん中にあって、それを演奏する側も聴く側も無心で楽しんでる感じが素敵ですね」

レジー「ドキュメンタリー見た時もそれはすごい感じた」





司会者「ライブ中にも触れられていましたが、クラムボンは結成20周年なんですね」

レジー「もうそんなになるのかって感じなんだけど、このバンドはどこかで大ブレイクみたいなものを経験したこともないし、特定層の支持を瞬間的にでも一身に引き受けて・・・みたいになったこともないわけで。それでも自分たちの音を追求して20年続けてきて、こういうイベントでトリを務めることにも何の違和感のないポジションに収まっていると」

司会者「シーンの後押しとか関係なく、どこに寄せるでもなく、ずっと音楽と向き合い続けてきた結果なんでしょうね」

レジー「そうですね。で、このまままとめに入っていきたいんですけど、この日のクラムボン見ながら思ったのがパスピエは20年後どうなってるんだろうなってことで」

司会者「想像つかないですね」

レジー「パスピエの2013年のブレイクって、彼らのやってる音楽が今のシーンの「コミュニケーション消費万歳」って風潮にうまく合致したって部分が大きいと思っていて。手拍子しやすいし、サビでうわっと盛り上がるし、「エスエス!!」って叫べるし、「音楽を介して皆で一体感を得たい」みたいな欲求にパスピエの曲ははまりすぎなくらいにはまった。で、そういう形でパスピエにはまってる人たちがパスピエを「交換不可能な存在」として今後も愛していくのか?「手拍子できて皆叫べるポイントがあるバンド」なら他のバンドでもいいのでは?ってのが正直よくわからないというか」

司会者「音楽そのものが好きか、それを介したコミュニケーションが好きか、ってのは一概には切り離せない問題だから難しいですよね」

レジー「このあたりはロックインジャパンの話を一昨年の夏にしたときからの一貫した問題意識なんですが。で、「コミュニケーション消費の先に何があるのか」ってのは音楽に限らずどの領域でもたぶんまだ誰も体験したことのない世界の話だから答えはないと思うけど、個人的には「対象を介したつながり」ばかりに気持ち良さを覚える人が「対象そのもの」にどっぷりはまることはないと思っていて。「フェス」と「一体感」が大事な「邦ロックシーン」にあんまり足を突っ込みすぎると「対象そのものではなく対象を介したコミュニケーション命の人たち」がメインの支持層になってくる可能性があるし、たぶんそういうバンドは刹那的に消費されて終わっちゃう。少なくとも20年経ってもディープに支持されるバンドにはならない」

司会者「うーん」

レジー「そういう瞬間沸騰的な支持獲得しかできないバンドだったら仕方ないけど、パスピエはそんな風に片づけられるタマじゃないと個人的には信じているから、改めて「コミュニケーション消費に絡め取られない音楽のあり方」を提示してほしいなと」

司会者「まさに成田さんがインタビューで言っていた「純粋な音楽をエンターテイメントで体現」ということですね」

レジー「うん。今回の新譜はそういうチャレンジの第一歩になっていると勝手に思っています。特に『あの青と青と青』は、「一体感」みたいなものとは別のところでのファンとの絆を作る曲になるはず。いろいろ書きましたがこのバンドには期待しかないので、今後の活動も楽しみにしています。いつもより長いですが今回はこんな感じで」

司会者「わかりました。次回はどうしますか」

レジー「今のところ未定でお願いします」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

連載「音楽で食わずに、音楽と生きる」 case3 会社員×アーティストメディア編集者

レジー「連載「音楽で食わずに、音楽と生きる」ですが、今回が最終回です。企画の趣旨およびこれまでのケースについてはこちらでご確認ください」

前口上
case1 会社員×音楽ライター
case2 会社員×バンドスタッフ

司会者「ライターやアーティスト活動のサポートなど、ミュージシャンではない形で音楽業界に関わりながら一方では会社員としても働いている方々の「二足のわらじ」生活について紹介する企画ですね。3人目としてご登場いただくのは、アジカンのゴッチが発行している「The Future Times」(以下TFT)に編集者として関わっているスズキエミリさんです」

レジー「ゴッチソロかっこいいよね。長く聴けそうな感じ」





司会者「TFTは4月15日に6号が発行されます

レジー「エミリさんとは音小屋周りの人たちと知り合う中でなんとなくつながりを持つようになったんですが、仕事をしながら若い人たちとも交流しつつ自身の発信活動を行っているところにシンパシーを感じています。年齢も同じだったりするので」

司会者「TFTと音小屋をきっかけとして、音楽周りの情報発信もいくつかされていますね。「Music Bungalow」という紙メディアを発行したり、ドリルスピンでコラムを書いたり。この「紙の編集という呪縛 ~紙のウェブ化ではない新しいかたちとは?~」は話題になりました」

レジー「こういうのとかは「音楽業界」との良い距離感の表れだよなあなんて思いました。今回のインタビューでは同世代の昔話から始まって、自分の仕事に「音楽=好きなもの」をどうやって持ち込んでいくかみたいなネタを中心に話をしていただきました。それではどうぞ」

---


---僕はエミリさんと同い年なので当時の就活、2003年の春くらいの空気感は共有できていると思っているんですけど、あの頃って今よりも「音楽ライターになる」とか「音楽業界に入る」とかって気軽に言いづらかった雰囲気があった気がします。

「そんな感じはありましたよね。音楽ライターって話で言うと、そもそもウェブ媒体が今ほどなかったから書ける場所も限られてたし」

---紙メディアが全盛でした。

「雑誌は大学入る前から大好きで、それこそロッキング・オンの出してる雑誌とかもちろん読んでました。鹿野さんがBUZZからJAPANに行って、あとはスヌーザーもクッキーシーンもあって、なんていう時代で。そういう業界に飛び込むって選択肢もあったのかもしれないけど、なんとなく閉じた世界のように感じて怖気づいてしまって。で、当時は今以上に広告が流行ってて」

---流行ってましたよね。スタークリエイター時代。

「箭内道彦さんとか佐藤可士和さんとか、あの辺の人たちが独立してみたいな時期だったから、「文脈を作る仕事」って観点で考えると広告周りはいろいろできそうだなと思って。そんなことを感じながら広告会社をいくつか受けている中で、名古屋に本社がある代理店に受かりました。自分は神奈川出身で東京の大学行って、田舎もなくてって感じなのでどこか全然違うところで暮らしてみたいっていう思いを持ってたこともあり、直感的にその会社に行くことを決めました。私は2004年入社なんですけど、仕事始めたころは愛・地球博で名古屋が盛り上がりつつあったタイミングでした」

---あー、なるほど。

「その会社ではウェブメディアの仕事とかをしてましたね。業務外のことで言うと、名古屋でも東京にいたときと同じように音楽とか本とか自分の好きなものがある場所を探しながら暮らしていました。今池のHUCK FINNとかTokuzoとかのライブハウスに行ったり。the ARROWS やSoulkids、あとは24-two four−も見ました。そんなこんなで4年目になったんですが、会社としてはなかなか東京に戻してくれる気配がない。そろそろ別の地方に行くとか、地元の湘南に帰りたいとかそんなことを漠然と考えていた矢先に、今の会社が「湘南スタイル」っていう雑誌を出しているのを知って。ニッチで面白いかなと思い受けてみたところ採用いただけたので、そこに移ることをふわっと決めてしまいました。今では広告よりも編集の仕事の方が長いですね」







---そういう仕事をやりつつTFTの編集にも継続して関わってるわけですが、きっかけは何だったんですか。

「ちょうど震災をまたぐくらいのタイミングで当時やってた雑誌の別冊としてフェスの本を作っていて、その中でゴッチさんとかトシロウさんとか「自分でフェスを作っているアーティスト」のインタビューをいくつか企画していて。ゴッチさんには震災後にインタビューして、この先の音楽の役割とかそんな話をしたんですけど。無事にその本はできたんですが、そのくらいのタイミングでゴッチさんが新聞を作りたいみたいなことを言い始めてたんですね。すごくいいアイデアだと思ったので「ぜひやってください」という形でコンタクトをとったら、向こうはすでに私のことを編集の人として認識していたから、「もしかしたら作るときには力を貸してもらうかもしれません」みたいな感じになり、その1週間後には「みんなで集まって会議をしよう」と話が進みました。それが5月のあたまくらい。で、そのまま作りましょうという流れになりました」

---会社の仕事で知り合ったことがTFTにつながっていったわけですね。

「そうですね。あのタイミングは絶妙だったなあと思うし、これはやった方がいいんだろうなって状況がそう思わせたって感じです」

---エミリさん以外のメンバーも本業の仕事を持ちつつって感じなんですよね?

「はい。当時集まったメンバーは「何かしなきゃ」っていう熱をみんな持っていて、でも自分はジャーナリストでもないから仕事で継続的に何かをするのは難しいってそれぞれが思っている状態でした。ゴッチさんの初動に反応した人たちと今も一緒にやってるわけで、不思議な仲間ですよね」

---普段はどのくらいの作業負荷がかかってるんですか?

「そんなにめちゃくちゃ忙しいってわけではないです。年2、3回出せればって感じなんですが、その前後が少し大変なくらいで。会社の仕事がパツパツな時と重なると時間のやりくりが大変で徹夜みたいなこともないではないですけど、まあ他のことでも徹夜することはあるから一緒ですよね(笑)」

---TFTの活動に関してはお金は発生していないんですよね。

「そうですね。だから仕事とは全然思ってないです。いろんな人の善意だけで成り立っているのがすごいなあと中にいながらも思います」

---なるほど。仮にお金が発生したとして、そっちを生活の主体にしていくイメージってわきますか?

「TFTは・・・あれはある種の社会実験としてやってるので、そこにお金が発生するってのが考えづらいですね。たぶんないと思う」

---質問を変えると、TFTってど真ん中で音楽の話をしているわけではないけど、音楽(ミュージシャン)を介したメディアではあるじゃないですか。で、現状自分の食い扶持を稼いでいる仕事は音楽から多少は距離があると思うんですけど。TFTをやってみて、音楽により近い領域で飯を食いたいとかそういう思いが新たに沸いてきたりはしないですか?

「そうですね・・・そもそもTFTをやる前からフェスの本を作ったり、自分がやっていた媒体のイベントにアーティストを呼んだり、意識的に音楽と絡めたことはしていたんですよ。たとえばNabowaのメンバーと一緒に山に登ってそこでセッションして曲を作ってもらうなんてことをやって。それを誌面で記事にし、その曲のタイトルをウェブで募集したりとか」



---へー。

「個人的には、既存の音楽ライターになるとかA&Rになるとかじゃなくてそういうことをしたいんです、どっちかというと。この企画はバンドのプロモーションにもなるし、逆にNabowaファンの人が山のことを知るきっかけにもなるはずだし。だから「音楽により近い領域で仕事を」という気持ちはありますが、自分の中ではそれは「音楽メディアに行きたい」というようなことではなくて、TFTの活動で得たこと、それこそ音楽業界の現場感、「できることとできないこと」「まだ誰もやってないんだけどアーティストが実はやりたいと思っていること」みたいなことに関する肌感覚なんかも含めてなんですが、そういうものを自分の本業の中に取り込んでいこうという側面の方が大きいです。自分の“好き“を少し仕事に持ち込んでみることで、会社の仕事でできることの幅が広がっているって感じなんですよね」

---「食うための仕事」と「好きなもの、やりたいこと」をうまく融解させるという感じですね。そういう思考になったのは働き始めてからですか?

「仕事する前はそんなことは考えてなかった気がするなあ・・・あとは、インターネットの存在が大きいですよね。「働き方の多様化」とか「小商い」とか、ネットのあり方をベースにしてそういう動きが最近すごくたくさん出てきてるじゃないですか。少なくとも私は学生の時にそんなこと考えられなかったです。今みたいにインターネットが一般的に普及した世の中だったら私ももうちょっと気軽にいろいろやってたかもしれないけど」

---なるほど。ところで、エミリさんは音小屋(注:鹿野淳による、音楽メディア人養成学校)に二期生として参加していたわけですが。

「はい」

---エミリさんのような「純然たる音楽業界の人ではないけど、自分の仕事の領域を音楽に意図的に接近させるような働き方をしている人」から見て、「「仕事」としてのイメージはぼんやりしているけど何となく「音楽ライターっていいな」みたいなことを思ってる若い人」に対して、キャリア的な観点から何か感じたことがあれば教えていただけると。

「うーん・・・ちょっと話それちゃうんですけど、私が行った期は社会人が比較的多かったんですが、それでも社会人少ないなっていうのが最初の印象で」

---あー、はいはい。

「とってる側の意図もあるからわからないですし、音小屋の参加状況だけでどうこう言える話でもないですけど、会社で働いていてそのうえで何かを求めてやってくる層っていうのがもっといるんじゃないかなあなんて思っていたので。自分みたいな動きをする仲間を求めていた部分は結構大きかったんです。若い人に対して・・・とか以前に気になったのはそっちですかね」

---社会に出た人がもっと仕事以外のことやったらいいんじゃね?ってのは僕もすごく思います。「いやーもう仕事してるんで」って言って何もしない人たちは多いし、そういう人が世の中つまらなくしてると本気で思っていて。

「以前レジーさんのそんなツイート見ましたけど(笑)、それは間違いないですね。「大人が音楽を聴き続けられるようにする」みたいなことについては、自分のような人間が動かないといけないという使命を少しは感じています。普通の人よりは熱量がどうやらあるらしいので(笑)、多少身を削ってでも何かしらそういうことをやりたいとは思ってますね。例えばですけど、夜遅い時間から始まるライブを企画するとか」

---いいですね。レイトショーくらいの感じで見たいです。

「ビルボードの21時半からの回があるとかはいいと思うんですけど。だって19時半でも辛いじゃないですか。既存のライブハウスだと難しい部分もあるのはわかっているから、最近はそうではない空間でやってるイベントとかに興味があったりします」

---そういう発想も普通の会社勤めをしたからこそ生まれるものだったりもしますよね。

「うん。まともに働いてるからこそ、この時間のライブに行けない人がこれくらいいるとかわかるわけで。そういう意味で言うと、音楽業界に憧れてる大学生とかに対して思うのは「既存の「音楽業界」に今いろんな問題意識を持っている若い子が真正面から入っても、何か影響力をすぐに行使できることは恐らくあんまりないんじゃないか」ってことですかね・・・」

---重いですね。でもそうだろうなあ。

「やっぱりその場の空気に倣わされますよね。これだけ音楽業界に対していろんなことが語られているのにそれでもレコード会社とかそういうところに入りたいっていうのは、あまり深い問題意識は持ってないのかなあとも逆に思ったりします。ライターにしたって、ロッキング・オンですら会社自体はフェスありきじゃないですか。JAPANで書いてるから云々みたいな媒体の力はもはやなくなってる気がするし、何に憧れてるのかが正直わからなかったんですよね。それは今でもあんまりわからない。そういうところに行くのであれば、外から変えていくとかの方がよほど早いし面白いかもとは思います。でも、これは自分が既に働いているからこそ思うことなんでしょうけどね。きっと学生の方が聞いたら「じゃあどうしろっていうんですか?」ってなっちゃうとは思いますが」

---なるほど。

「もちろん外からアプローチするゆえの大変さはありますけど、それを乗り越えるたくましさみたいなものは今の時代は必須なのかなとは思います。今後何かをやるうえではインターネット上での発信は避けて通れないと思いますけど、その段階でも絶対求められるし。いろいろダイレクトに来ちゃうから」

---そうですね。ほんと叩かれますからねいろいろ。

「(笑)。いや、ほんとにあれは・・・」

(しばらくインタビュー近辺にあったツイッターでのいろいろな出来事に関する雑談)

---ありがとうございました。とりあえず、メインメッセージは「たくましく生きよう」ってことで。

「そうですね(笑)。冗談抜きに、ほんとにたくましく生きないといけないと最近思います。体力大事ですね(笑)。あとは、ナイーブになったりこれは自分じゃなくて誰がやるべきみたいなことを言いだすのが今の時代一番バカバカしいというか」

---「あそこに行かないとこれができない」みたいなことでもないですよね。

「やればいいじゃん!って時代のど真ん中に今私たちは立ってるんだろうなと。でも早くやらないとそういう時代は終わっちゃうよっていう」


---

司会者「何か感想などあれば」

レジー「たくましさ大事ってのはほんとそうだなあと最近つくづく思いますわ。エミリさんの事例は本業のスキルやそこで培った人脈をダイレクトに活用して会社の外でも活躍してるってケースですが、そこにとどまらずに「会社の外で得たことを、さらに会社の仕事に持ち帰ってくる」っていう循環を作ってるんですよね。そういう直接的なリンケージを作れるかどうかってのは業種にもよるけど、こういう心掛けは大事だなと感じました」

司会者「これで3人分のインタビューを終えましたが、この連載全体を通してについてもお願いします」

レジー「お三方とも共通してたのは「所属するとかじゃなくて、自分主体でやりたいことをやる」っていう考え方でしょうか。ここには僕もすごく共感します。あとは皆さんバランスがいいですよね。「音楽業界」を絶対視しないというか、自分の立ち位置を定めたうえでそこからどうアプローチするか、みたいな発想が根底にあるなあと思いました」

司会者「今の自分の働き方もしくは将来の自分の働き方をイメージしながら、前口上と3人分のインタビューを改めて読んでいただきたいですね」

レジー「通しで読むと何かしらインスパイアされる部分があるんじゃないかと思います。というわけで、この連載はこれにて終了ということで。最初は友達紹介くらいの感覚でひっそりやる企画になると思ってたんだけど予想外に反響あったね。お忙しい中ご協力いただいたみなさん本当にありがとうございました。もし機会があれば続編とかスピンオフみたいなことやりたいです」

司会者「わかりました。では次回はどうしましょうか」

レジー「そうですね、パスピエの新曲についてやるかなー。ちょっと考えます」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

連載「音楽で食わずに、音楽と生きる」 case2 会社員×バンドスタッフ

レジー「前回に引き続き、連載企画「音楽で食わず、音楽と生きる」をお送りします。これまでの記事はこちらをどうぞ」

前口上
case1 会社員×音楽ライター

司会者「ライターやアーティスト活動のサポートなど、ミュージシャンではない形で音楽業界に関わりながら一方では会社員としても働いている方々の「二足のわらじ」生活について紹介する企画です」

レジー「前口上入れると2回記事をアップしましたが、面白いなと思ったのが普段のエントリよりもフェイスブックのいいね!の数が多いんだよね」

司会者「「働き方」みたいな話はあのSNSと相性が良さそうですね」

レジー「いかに自分の人生を充実させるか!みたいなね。まあ確かにそういう側面もあると思うので、これを機に今までこのブログ知らなかった方にも読んでいただけると嬉しいです。というわけで今回も「二足のわらじ」生活を送っている方のインタビューをお送りします」

司会者「今回ご登場いただくのは、THE NOVEMBERSのスタッフとしてプロモーションなどを担当されている舐太さんです。ツイッターではこの犬のアイコンでおなじみ

レジー「THE NOVEMBERSは昨年UK PROJECTから独立したわけですが、舐太さんは自主レーベル「MERZ」でメンバー4人と一緒にバンドのかじ取りに関わっています。一方で、普段は「普通の人間」として一般企業で働いています」

司会者「「人」と「犬」の二足のわらじ生活です」

レジー「去年THE NOVEMBERSが『zeitgeist』をリリースしたときにボーカルの小林さんにインタビューさせていただいたのですが、それに関してお声掛けしていただいたのも舐太さんでした。そんな縁もあって、今回はこちらから舐太さんにオファーして実現したのが今回のインタビューです」



司会者「前回は「会社員」と「ライター」の二足のわらじでしたが、少し色合いが違いますね」

レジー「そうですね。今回はバンドに対してどんな役割として関わっているかということや、一般企業でのビジネスを知っているからこそ持ち込める価値などについてお話ししていただきました。それではどうぞ」

---


---昨日はライブお疲れ様でした(注:THE NOVEMBERSリキッドルーム公演翌日の2/22にインタビューを実施)。金曜日でしたけど、日中は普通に会社あったんですよね?

「レジーさんも昨日はお越しいただきありがとうございます。昼間は人間のフリをして会社へ行って、開場前にはなんとか犬になりました」

---なるほど(笑)。現状は会社員をしながらTHE NOVEMBERSにもスタッフとして関わっているわけですが、バンドとはどういう経緯で関わり始めたんですか?

「もともとメンバーとはTHE NOVEMBERSがまだ3人だった頃、初めて東京でライブをしたときからの長い付き合いです。スタッフになる前から友人で、普通にお茶をしに行ったりとかはしていました。自分が広告関連の仕事をしていたこともあって「こんなプロモーションはどう?」みたいな雑談をたまにしていたんですが、その流れでメンバーの方からUK PROJECTのチームに入ってほしいということを言ってもらえて、私としても挑戦してみたいと思ったので関わることにしました。時期としては『GIFT』が出る前なので2012年の夏頃からです。それで、メンバーとUK PROJECTのマネージャーさんと一緒に打ち合わせをするようになりました」



---現在はUK PROJECTからは独立して、「MERZ」という自主レーベルを立ち上げていますね。実質的にはメンバー4人+舐太さんで進めている感じですか?

「そうですね、バンドとして今後どうしていくのかの検討と物事の最終決定はメンバーと私で行っています。各メンバーに役割分担があって、それぞれの領域でいろいろな方にご協力いただいています」

---舐太さんが具体的にやってるのは・・・

「一番大きいのはプロモーション関連です。メンバーに対して「THE NOVEMBERSの事を知ってもらうためにこういうことをやるのはどうかな?」という提案をして、それを一緒に実行したり、媒体の方とのやり取りをしたり。あとは全体のタスクやスケジュールの管理、「いつまでにこれとこれをやらないと・・・」というチェックをしています」

---一方で、生活のためのお金を得ている仕事もあるわけですよね。

「はい。基本的にはWeb関連の仕事をしています。ただモノを作るだけではなく、クライアントのことを知ってもらう、その際にどのような印象を与えるかという部分まで考える、というプロセスに関わっています」

---そちらの仕事ではどんな部分がやりがいになっていますか。

「いろいろありますが、様々な業種の方と接する機会があるのが特に面白いです」

---新卒からずっとその仕事ですか?

「転職という経験は一度だけあります。以前は広告の制作会社にいました。メインはイベント制作で、台本作りから映像・音響・照明の手配、キャスティングなどが主な業務でした。基本的にプロモーションに関しては何でもやる会社でしたので、街頭サンプリングの企画運営やソーシャルメディアを活用したプロモーションなども担当したことがあります」

---音楽に関わる仕事に就こう、とその当時思ったことはありますか?

「その頃はなかったですね。もちろん音楽の事は好きだったんですが、それを仕事にしたいというよりは「生活の為に働ければいい」と思っていました。たまたま働いた会社で「物事を世の中に広める仕組みとしてどんなものがあるんだろう」ということに興味を持つようになりました」

---なるほど。で、現在は2つの「仕事」を同時に走らせているわけですが。平日の日中は会社に行かないといけないわけで、バンド関連の作業はそれ以外の時間になりますよね。

「そうですね、平日の夜とか。メールベースで進められることもあるので、日中の休み時間にもやれることはやっています。週末はほぼTHE NOVEMBERSのスタッフとして生きています」

---作業時間の捻出とかで大変なことってありますか?会社の仕事が忙しいタイミングもあるじゃないですか。

「会社の仕事自体はコントロールできる部分もあるのでうまく調整しながらやってはいますが、結局休みの日に作業をすることが多いですね。どっちも中途半端にならないように気を付けてはいます」

---それだと、休日に別の仕事をやっているみたいな形になっちゃいますよね。

「やることはいくらでもあるんですがそれに全部手を出してしまうと現状はさすがに体が足りないので、「自分はこういう側面での貢献をする」ということを明確にしたうえで関わるようにしています。もちろん、そういう限定的な関与の仕方ができるのはメンバー自身が「バンドをどうしていくのか」ということを自分たちで考えて実行しているからこそだと思いますが」

---会社の仕事を辞めてバンド側一本で・・・ということを考えたりはしますか?お金との兼ね合いにはなってくるとは思いますけど。

「THE NOVEMBERSのスタッフ一本でやるかやらないかということはあまり考えていません。ただ、時間や場所の制約がなくなれば、よりメンバーとの強固な関係を築けるとは思います。自主で活動しているという事もあり、メンバーには音楽にまつわる金銭的なことや業務的なことも知っておいてほしい…と思いながら、一方では音楽自体に集中できる環境に身を置いてほしいという思いもあります。例えば、ほとんどの仕事がウェブ上や電話で完結するようになれば両立も可能かなとか。なので、会社の仕事を辞めたいというよりも、よりバンドと同じ時間を過ごすための働き方を模索したいと思っています」

---現状は会社に行って仕事をしないといけないってところで時間や行動に多少制約が出てくるのがデメリットになっているけど、そこが解消されればってことですね。

「10年20年のスパンの話かもしれないですけど、会社勤めだとしてもメールとスカイプで完結できるみたいな、そういうスタイルもあるということがいずれは浸透してくるんじゃないかなとも思ってます」

---逆に、音楽業界以外の仕事を経験したり、2つの仕事を並行させていることで良かった面があれば教えてください。

「これまでやってきた仕事で得たスキルが直接的に役に立っていることもたくさんあります。パワーポイントの使い方とか提案の仕方とかを覚えたので、バンドの資料を作るのはそんなに苦にならないとか。それから、物事の進め方じゃないですけど、「計画を立てて、それに則ってスケジュール通りに進行する」という部分も会社での仕事を通じて身につきました」

---なるほど。

「あとは、お金に対する考え方ですかね。THE NOVEMBERSのメンバーも私も、手伝ってくれる人に対して気持ちはもちろん、お金でもきちんと誠意を示したいというか。チームとして本当にお金がなかった時に沢山の方が力を貸してくれたので、よりそう思うようになりました。だから、お互い良い仕事をして、お金をきちんともらったり払ったりしたいです。いくら芸術だ、感情を表現することだ、と言っても経済活動に参加しているのは間違いないわけで」

---傍から見てる印象ですけど、音楽関連のフィールドだと「世の中お金じゃないんだよ」みたいな価値観が悪い方向に働いてる感じはあるような気がします。

「思いますね。えげつない商売をしたいとかそういうことではなくて、事実としてお金は大事だろうっていう。その辺を気分やムードでうやむやにせずに、お互い気持ちよく良いものを作っていきたいです」

---うんうん。

「あと他に2つの仕事を並行させて良かったことって話に戻ると、音楽業界内部からの視点だけだと、音楽好きには何かを伝えることはできても、「音楽を積極的に探さない人」に向けて何かを伝えるのは難しいのかなと思っていて。そういう人が普段どういうことを意識しているのかを考える機会がもう一方の仕事では多いので、自分としては刺激になっています」

---その視点は意外と忘れがちですよね。僕も会社とかで「みんな音楽に興味ないんだな」っていうことを日々感じます。

「音楽好きだけではなくて、「特に音楽が好きというわけではない人」にどうやって存在を伝えて、関わりたいと思ってもらえるのかというのが重要なんじゃないかと思います。例えば、世間的に「わかりやすいポジティブさ」を持っている音楽が今の時代流行っていますけど、そうじゃない価値観もあるということを音楽に関心が薄い人たちにどうやって広めるか、もしくはその価値観をどうやって感じてもらうのかというのは考えどころだなと。THE NOVEMBERSの根底にあるのもポジティブさですから、そういった部分を感じてもらいたいし、広めたいですね」

---「特に音楽が好きというわけではない層」も見据えながらTHE NOVEMBERSの持つ価値観をさらに広めていくために、意識して行っている取り組みとかはありますか。

「そうですね、まずは前提として今のTHE NOVEMBERSのファンがどういうタイプの人なのかと考えた時に、「ロッキング・オン・ジャパン」を読んでいるような人たち、ラルクアンシエルとかディルアングレイなどが好きな人たち、あとはdipとかdownyなどが好きな人たち、などいくつかグループがあると思うんです。もちろんこういった「音楽の傾向によって分類できるグループ」をもっと開拓することでTHE NOVEMBERSを音楽好きの中に浸透させていきたいという想いはありますが、それに加えて「音楽からは少し離れた切り口で共通の傾向を持つ方々」にもバンドの存在を届けたいと考えてます。例えば、「BASE」という無料のECサイトを活用したり、物販でクレジットカードが使えるように「Coiney(コイニー)」というサービスを入れたり、あとはリクルートのキュレーションアプリの「KOLA」とコラボしたりしてるんですが、そういうところで新しいテクノロジーに積極的に取り組んでいるってところから関心を持ってもらえないかなとか」

---音源やライブだけでなく、それ以外での動きも含めてバンドにカラーを持たせていきたいということですね。

「ただ単に音楽があって、映像があって、パッケージがあって、という「点」を作っていくだけではなくて、音楽を起点にしてパッケージもミュージックビデオもプロモーションもライブも全部がつながっていって、その世界観をリスナーにさらに楽しんでもらえるような工夫をプロモーション全般においてしていけたらなと思っています。音楽だけに限らず、THE NOVEMBERSが表現したい事をよりわかりやすく、純度の高いまま社会に通訳するというか」

---ありがとうございました。最後に、僕自身の就職活動を振り返ってみると「2つの仕事をする」なんて発想は全く持たずにレコード会社とか出版社とかを受けて玉砕していたんですが、それから10年経った今の時代でも、同様のスタンスで音楽業界に入ろうとしている人も多いと思います。また、音楽とは関係ない仕事をしながら「何かしら音楽に関わってみたい」という気持ちのある社会人の方もいますよね。そういう想いを持っている人たちに対して、ご自身の経験から何かアドバイスなどあればお願いします。

「私の場合は本当に巡りあわせだったのであまり大きなことは言えないのですが、どこかに所属しているかどうかということはあまり関係ないかと思います。その人が音楽に持ち寄れる何かがあって、それを人に提案していくということでしかないというか。自分としては音楽業界どうこうっていうよりは、THE NOVEMBERSという音楽を創る人たちや生み出される音楽そのものとなるべく近い場所で、そしてよりよい形で関わることを大事にしたいです。あとは…好きなことを一つに絞る必要はないと思っています」

---あー、それはいい言葉ですね。

「好きなことは一つだけっていうのは美徳に聞こえるかもしれませんが、それで潰えてしまう可能性もあるかなって思います。個犬的にも、好きなことに対して自分のできることを考えながらポジティブな気持ちをもって接していきたいです」


---

司会者「何かご感想があれば」

レジー「こういう「フリーのプロモーション専門家(副業として)」みたいな職業はこの先拡大していくんじゃないかなと思いました」

司会者「津田大介さんもそんなことを言ってますよね。「音楽ライターの仕事の広がり方」という文脈での発言ではありますが」

今もメーカーにはA&Rという仕事がありますけど、部署単位じゃなくて個人の単位で、応援したいアーティストをフリーランスでサポートする。そういうエアポケット的な部分を埋めるような役割が、今後は求められるようになると思います。
(『Tweet&Shout ニューインディペンデントの時代が始まる』津田大介)




レジー「最後の「好きなことを一つに絞る必要はない」ってのも刺さりました。あとお金の話が出てきたけど、こういう「ビジネスの基本」みたいな感覚って意外と大事だと思うんだよね」

司会者「音楽ビジネスもあくまでも世の中にいくつもある産業の1つだったりしますしね」

レジー「そうそう。そういう相対化って何事にもおいても重要な視点だと感じます。これはどんな仕事に対してもそうだと思いますけど」

司会者「能動的な音楽好きではない人を見据えて、って話もそのあたりに関連してきますね」

レジー「「音楽に興味ない人にも届けたい」って言う人はたくさんいるだろうけど、日常的に接してる中からの発想だと説得力が違ったりするなあと。パーソナリティーも含めて、バンドにとって舐太さんみたいなバランスの方がいるのは重要ですよね。音楽が良くても、そこにぶら下がってる人が不誠実だったりもしくは妙に過保護だったりしたらバンド自体をスポイルしちゃうだろうし」

司会者「そういうケースも多々ありそうですよね」

レジー「会社員をしながらもう一つ「会社」経営に関与してるみたいなもんなわけで、このバイタリティは見習いたいなと思います。今回はこんな感じで。次回は最終回となります。アップまでしばしお待ちください」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

連載「音楽で食わずに、音楽と生きる」 case1 会社員×音楽ライター

レジー「というわけで、前回告知した連載「音楽で食わずに、音楽と生きる」を始めたいと思います。連載の趣旨についてはこちらの記事をお読みください

司会者「ライターとかアーティスト活動のサポートとか、ミュージシャンではない形で音楽業界に関わりながら一方では会社員としても働いている方々の「二足のわらじ」生活について紹介する企画です。前口上が佐々木俊尚さんにRTされました」




レジー「予想外でした。で、拡散されると例によって??な反応があったりするんですけど、改めてお伝えしておくと今回の企画って「音楽以外の仕事を持つミュージシャン」についての話じゃないですからね。そういうのに興味ある人はたびたび紹介している「OTONARI」を読んでください」




司会者「「俺の周りのミュージシャンは前から大体そうだよ、自分も含め」的なコメントをいくらか見ましたね」

レジー「読まずに拡散してるのかね。まあいいや。早速始めましょう」

司会者「一回目にご登場いただくのは、Qeticなどでライターとして活動している定金啓吾さんです」

レジー「彼とは数年間同じ会社で文字通り机を並べて働いていたことがあって、しかも同じ中高の出身だったりと何かと縁があります。「会社員しながらでもライターとかやって世の中に発信できるんだ」って知ったのも定金さんの動きを見てからだったし、そういう意味では僕がブログを始める遠因を作った男ですね」

司会者「ヴァンパイア・ウィークエンドにインタビューするなど大物とも絡んでます」

レジー「今回の記事では、ライター活動を始めるに至った経緯や会社の仕事とのバランスのとりかた、2つの世界を持つことによって生まれる視点などについて話してもらいました。それではどうぞ」

---


---まずは簡単にライターとしての自己紹介からお願いします。

「媒体としては主にQeticに書いています。昔はたまにOTOTOYにも書いていましたが、今はQeticが中心です。あと最近は自分でブログも始めました」

---Qeticとはどういう形で関わってますか?

「特に専属契約をしているわけではなく、単発で頼まれたものの中からスケジュール的に可能なものを選別して書いてます。それに加えて、頼まれるものだけではなくて取り上げたいライブや作品を自分から提案して書かせてもらっているので、結構好きにやらせてもらっていますね」

---ラナ・デル・レイとかそのパターンだよね。



ラナ・デル・レイについては、Qeticの人とユニバーサルの人それぞれに頼みました。あとはバンクスについてもまだレーベルとかが決まっていない状態でQeticで書かせてもらいました。結果的にユニバーサル系列のレーベルと海外で契約したので日本でもユニバーサルで扱うことになって、前から知っていた担当者の方がバンクス担当になったんで、今後なんかやるときに一緒にやりましょうみたいな話はしやすくなったっていうのがあります」



---外の媒体でも書いているのにあえて個人ブログを始めたのは?

「前からやろうやろうとは思ってたんですが、ブログの設定がめんどくさいとかそういうレベルでやっていなくてようやく始めました(笑)。“自分なりの音楽を楽しむプロセスを可視化したい”というのが始めたきっかけです。あくまでもカジュアルにですが。あとは、書きたいことは思いついているのにアウトプットの場がないということがあったので」

---持ち込んだら全部やらせてもらえるわけでもないんですもんね。

「アウトプットを続けることで何かしら自分なりの音楽に対する視点とかが可視化されて、それをヒントに音楽を楽しむ人が少しでもいてくれたら良いなという感じですね」

---かたや会社員としても働いているわけですが。

「そうですね。2007年から会社員やっているので7年目です。メーカーからコンサルティングファームに転職して、今度ウェブビジネスの会社に移ります」

---ライターとしての活動は学生のころからしていたんですか?

「いや、やってないです。仕事として始めたのは2010年から」

---会社員になってからなんだ。

「そうですね。学生の頃からスヌーザーに投稿してちょこちょこ掲載されたり、イベントに足を運んだりもしていましたが、具体的に仕事にはなっていなかったです」

---学生当時はライターとか音楽業界で働く人になろうとは思わなかった?

「そもそも就職活動をちゃんとやってなくて、大学卒業後のこととか考えてなかった(笑)。秋採用やってた会社にかろうじて滑り込んで働き始めたみたいな感じです。そんな形で入った会社だったこともあって仕事に全く魅力を感じず、1年目ですぐ辞めようと思ってスヌーザーの編集部を受けたんです。そうしたらそこで「安定した会社で働いてるんだから絶対辞めないほうが良いよ。雑誌編集のことを知りたいというのならまだしも、文章を書きたいということであれば今後書く手段はいくらでもあるだろうから」とかなり強く説得されまして。それでそんなもんかなあと思いつつ他の出版関連の会社からも内定もらったんですけど、やっぱり生活面考えるとかなり厳しい条件が出てきて」

---生活のこと考えるとなかなか踏み切れない部分もあるよね。

「先方からも「この条件なら悩むのも当然ですよね」みたいなこと言われて、結局ヒヨって行きませんでした(笑)。ただその頃は「とにかく会社を辞めたい」というのが強くて。何か音楽に関与できないかな〜とは思っていたので、今後のためにも音楽方面の知り合いを作っといた方がいいだろうという思いでプロのライターさんがやっていた音楽ライター講座に参加するようになりました。それが2008年ごろかな」

---会社辞めようと思って何か書く仕事でいろいろ見たけどそっち行くと相対的に生活はきつそうだみたいなのがわかってきて、もうちょっと人脈を構築するためにライター講座に通うようになったと。

「そこで知り合った同期は今でもライター仕事をしている人が結構いて、そのうちの1人でOTOTOYに参画している人がいるんですけど。で、その彼からOTOTOYでのオウテカのインタビュアーとして声をかけてもらったのが最初のライターとしての活動ですね。ちょうど『Oversteps』っていうアルバムをリリースした2010年ごろ。で、実際にやってみたら、ビートインクの人にあれは聞いちゃダメとうるさく言われることもないし、オウテカと話すのも面白かったし、これは楽しいなと。お金は全然出ないですけどね(笑)。そこからレビューとかはちょこちょこ書くようになって、次にインタビューやったのが同じく2010年に『High Violet』をリリースしたときのザ・ナショナル。これはQeticで既に仕事をしてたライター講座の同期からの紹介です。自分の音楽の趣味的にはOTOTOYよりもQeticの方が親和性があったので、その後はQeticでの仕事が定着していきました」





---ライターとしての活動が増えていく中で、働いていた会社への気持ちの折り合いはどうつけましたか?そもそもが「会社を辞めたい」から始まってライター講座に参加したわけですが、やっぱり音楽関連一本でやっていきたいと思ったことは・・・

「それはスヌーザーを受けて以降は一度もないですね。会社員と比べると生活が厳しくなるってのをリアルに感じたというのもあるし、あとは上司が変わって仕事が面白くなったということもあって「辞めたい」という気持ちが薄れていったんですよ。そうやって働いていく中で、仕事の楽しみ方とかキャリアの作り方とかをイメージできるようになってしまったのもあり、音楽側に完全に軸足を置こうという気持ちが前面に出てくることはなくなりました」

---そうやって会社員とライターとしての活動を両立させてるわけですが、時間はどうやって捻出してますか?

「僕は結構真面目なライフスタイルですよ(笑)。平日は会社があるから、朝5時に起きて8時半くらいまでは音楽関連のインプットだったり何か書いたりっていう時間を取っていますね。夜は疲れてやれないので。あとは土日ですね。週末は奥さんと出かけたりとかもしますけど、大体途中でカフェ寄って音楽関連の本読んだり集中してアルバム何枚か聴いたりとかしてますね。家ではそういう時間を「勉強の時間」って言ってますけど」

---外出先でってのもすごいな。奥さんはそのとき何されてるんですか?

「んー、どっかほっつき歩いたり本読んでたり」

---理解のある奥さんですね(笑)。

「知り合った時から「音楽の人」って認識を持たれているからですかね。そういう認識があるせいか、ダブル・ジョブであることも奥さんとか親とかから違和感は持たれていないと思います」

---なるほど。ライター活動を「本業」ではなく「副業」としてやっていくと、今説明してもらった「時間の捻出には多少負荷がかかる」って話だったりとか、メリット・デメリットがいろいろあると思うんですけど。

「メリットというか会社で働いていて良かったなと思うことですけど、まとまったお金が動くときの意思決定とか大人の思惑とか、そういうものに対する肌感覚を得られたってのが大きいですね。ビジネスに対する感覚というか。音楽業界も「ビジネス」である以上は資本の投下とそれに対するリターンっていう側面がありますよね。そういった背景を踏まえたときに、アーティストだけでなくメディアやレーベル、そしてオーディエンスがどういう動きをするのかとか、そんな中で自分の発信したいことがどう位置づけられるのかとか、そういう俯瞰的な視点を持つことができたのは会社員としてガッツリ働いていたからだと思います。あとは、やっぱり「音楽好きな人たち」と接しているだけでは得られないフィードバックが沢山ある。社会に出ると、全く価値観の違う人と働かざるを得なくなったりほんとにとてつもなく優秀な人を見てインスパイアされたりってことが予想できないレベルで次々に起こるわけで、そこから得られる知的刺激がたくさんあります。音楽の話が全く通じない人たちと日常を共にする中で見えてくることもあるし。やはり自分くらい音楽を聴く人って世の中全体で見たらかなりレアで、大半の人はそんなに聴いてもないし、真剣でもないですから。業界内ではなく外側に居たことで、そういう当たり前のことを改めてリアルに感じられたかなと」

---逆にデメリットとしては何かありますか。

「これは善し悪しだとは思うんですけど、専業のライターに比べると業界の中の人たちとの距離が遠いってところですかね。距離があることで業界内にいると得られる1次情報が僕には入ってこないということもやはりありますので、それは相対的に見るとデメリットかもしれないです。あと、そこまで知られてないから気を遣わず好きなことを書ける反面、たとえばライターの方や既存メディアの方の間で日々やり取りされている「今後音楽メディアどうなる?」みたいな話についての空気感を共有できないですよね。そういうところについては切り離されていると感じる部分はあります。ただ、業界のアウトサイダーこそが何か新しいものを作っていく場合もあるので、内部の人たちと話しているからアイデアが出るかというと別かもしれませんが」

---それこそ会社員としての仕事から得られたアイデアが、業界の常識を覆す可能性もあると。

「そうですね、普段の仕事を通じて音楽メディアとか音楽の言論空間とかの今後のあり方としてどんなものがありえるのかみたいな示唆が得られるんじゃないかとは常々思ってます」

---ありがとうございました。最後に、このブログは「将来音楽ライターになりたい」って学生さんとか、「いつかは音楽に関わる仕事をしたい」と思ってる我々と同じ会社員の方とかにも読んでいただいているようなので、そういう方たち向けに何かあれば。

「キャリア構築でもプランA/B/Zみたいな考え方がありますけど、「生業として食べるための仕事を着実にやりつつ、片方では好きなことをやっていく」「そのうち好きなことで金銭的に独立できそうになればシフトチェンジする」「そうでなければ生業をベースにしながら好きなことを続けていく」みたいな形で、生活のための仕事と本当にやりたいことは戦略的に並走させられると思います。僕とかレジーさんが社会に出たゼロ年代の半ばと比べて、アウトプットする手段とか自分を知らしめる手段は確実に増えてますよね?だから「ライターやりたい」「何か表現したい」ってのは大いに結構だと思いますが、食い扶持は確実に稼いで生きていく方がもともとやりたいことや夢みたいなことを実現させていくには実は近道だったりするんじゃないかと。普通の仕事をしているから時間がなくてアウトプットができないとか、何かにアクセスできないってのは言い訳でしかない世の中になっていますから」


---

司会者「何か感想などあれば」

レジー「ライター講座への参加をきっかけにして活躍の幅を広げていった今回のケースは、似たような境遇の方々にとって参考になるのではないかと。彼は会社員になってからライターとしての活動を始めてるんだよね。もちろん「それまでの蓄積があった」「文章を書けるセンスがあった」からこそだから誰でもできますなんて無責任なことは絶対に言えないけど、この手のことを始めるのに遅すぎるってことはないんだと思います」

司会者「社会に出たら急にそういう「仕事以外のこと」に反応示さなくなる人いますけど、それとは真逆ですね」

レジー「ほんとそうね。会社入って途端につまらなくなる奴たくさんいるから。この「どこに所属していても、音楽に関わろうと思えば何かしら手はある」って話はこの企画に通底するメッセージになってるかなと。音楽を「ビジネス」として捉えるっていう視点を養えたのは会社勤めしたからこそ、って話はなるほどなあと思いました。外にいるからこそ気がつく部分というか。2つの立ち位置があるから、それぞれでの出来事にインスパイアされつつ思考が深まっていっているというのがよくわかりました」

司会者「5時起きってのもハードですね」

レジー「物理的な部分での大変さはやっぱりあるんだよね。僕も会社行く前に作業すること多いし。そういう負荷をかけた分の面白さはありますよ。こんなトーンで、あと2人の方のインタビューをお届けしたいと思います。次回までしばしお待ちください」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」
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