レジーのブログ(旧)

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Dragon AshとAKB48をつなぐ「Show Must Go On」の精神

レジー「「ビクターロック祭り」に行ってきました」

司会者「ビクターと言えば最近はクリープハイプ問題ですが」

レジー「そういや出てなかったね」

司会者「サカナクションがヘッドライナーでした」

レジー「やっぱ紅白に出るバンドは大物感が違うね。ほんとに人気があるんだなーとびっくりしながら見てた。ライブ自体もサービスセットリストですごい迫力だった。他にもくるりとかCoccoとかまとめて見れてすごい贅沢でした。Cocco久々に見たいなと思って参加を決めたんですけど良かったなあ」

司会者「以前EMI ROCKSなんてイベントもありましたが、レコード会社主導のイベントも定着化しつつありますね」

レジー「音源売るだけじゃ商売的に厳しくなってるんだろうなあ」

司会者「下手すりゃちょっとしたロックフェスより豪華ですよね」

レジー「このあたりはそれなりに難しい問題もはらんでいるような気もしました」










司会者「長い目で見ると自分で自分の首を絞めるというか、焼畑農法的になっている感じもありますよね」

レジー「この辺りの動きは注視していきたいと思っています」

司会者「印象に残ってるアクトはありますか」

レジー「さっき名前挙げたのはもちろん良かったし、あとはドラゴンアッシュかっこよかったですね」

司会者「ちょうどアルバムが出たタイミングです」



レジー「予習していったよ」

司会者「好きなんですか」

レジー「正直最近そこまでリアルタイムで追ってるわけじゃないんだけど、なんだかんだでヒーローですからね僕にとっては。同世代でそういう人多いと思う」

司会者「ブレイクストーリーをリアルタイムで体験したのはでかいですね」

レジー「『BUZZ SONGS』で火が付き始めて、『Let yourself go, Let myself go』が売れて、って流れでどっぷりはまりました。『陽はまたのぼりくりかえす』のスタジオライブっぽいの見つけたけど、たぶんこれFACTORYだよねえ。これで初めて歌ってる姿を見たような気がする」



司会者「若いですね」

レジー「若くて新しい世代の人たちが出てきた、って感じがした。BSでやってた横浜アリーナのライブは録画してVHS擦り切れるくらい見た」

司会者「これも動画ありますね」



レジー「素晴らしい。この頃はジブラとあんなことになるとは思わなかった。これが99年。で、2000年のひたちなかね。この『Viva la revolution』ほんと最高だよ」



司会者「このとき初めてドラゴンアッシュ見たって人も結構いたでしょうね」

レジー「うん。僕もそうだった。この動画は今見ても胸が熱くなる」

司会者「号泣してましたよね会場で」

レジー「ほんと待ち望んでたんだよね。その後ひたちなかに毎年出て、ほぼ全部見てるけど去年は見なかったなあ。まあそのくらいの距離感です。ちゃんとしたファンではないけど動向はいつも気になってるって感じ」

司会者「この前アルバムのプロモーションで珍しくテレビに出てましたね」

レジー「「LIVE MONSTER」ね。あの『FANTASISTA』すごかったなあ」

司会者「ネットに落ちてます」

レジー「これは一見の価値あるので見てない人はリンクからぜひ。で、司会のドリカム中村正人とのトークでこんなことを話してました。最近のチャートについてみたいな話題でのやりとり」

中村「いいよねえ、AKBのファンがドラゴンアッシュ見てくれても」

Kj「どっちも好きな奴もいるかもしれないし」


司会者「いるかもしれない、というか」

レジー「それこそドラゴンアッシュが去年ひたちなかに出た日はBABYMETALと9nineが出ててどちらもすごく盛り上がってたわけで、両方見たって人たちも一定数はいたと思うんだよね。そういう状況考えても、AKBもドラゴンアッシュも好きって人は特別な層ではなくて普通に存在すると思います」

司会者「あとこんな人も

74:名無しさん@実況は禁止です:2013/02/20(水) 14:31:54.74:FRCbE9Oi0
15年前はDA聞きながらバタフライナイフを振り回してるのが
かっこいいと思ってた自分が今はAKB聞きながらサイリウムを振り回してるのか
年とったな


レジー「これ自分と同世代だろうなあ。ロック側からアイドルに流れた人たちね」

司会者「たまたまテレビでこんな話になりましたが、Kjは以前AKBについてはこんなことを言ってますね。シングル“Run to the Sun/Walk with Dreams”リリース時のインタビューです

なんというか、俺、AKB48はマジですごいと思ってるのね。やったことのないことをやってるし、青春の全てを賭してあの子たちはやってるわけなんだから。ただ、そういうAKBのメンバーを囲むのがビジネス的なものばかりじゃだめだと思う。だってビジネスマンが音楽をやってるわけじゃないんだから。……青臭くても綺麗事を言っていくのがアートだと思うし、俺らが綺麗事を言わなければ誰が言うんだよ、っていう。

今の俺にはそこはすごく見えてる。俺はAKBのファンの人たちも本当にすごいと思ってるんだ。周りからどう思われようが、働いた金でCDを何枚も買ってる人がいるわけじゃん。実は、その人達が一番俺に近いと思うんだよね。忌み嫌われてようが、それがクリエイティヴでなかろうが、格好悪かろうが、自分が応援したいから応援する。棒を振りたいから振る。あの願望みたいなエネルギーが、俺は音楽に対して、ある。AKBのライヴ中にさ、踊って、掛け声を上げて、汗かいてる人、傍から見たらすげえ滑稽じゃん? だから俺も同じように滑稽なんだと思うんだよね。でも、それでいい。人の目を気にせずエネルギッシュでいる部分では、あの人たちに俺は負けたくないと思う。


レジー「これ、結構唐突に出てくるんだけど、ちゃんとマーケットを見ているが故の発言だなと思いました。見て見ぬふりしてやってたり無関係なものと捉えてる人らよりは全然良いなと」

司会者「「AKBのメンバーを囲むのがビジネス的なものばかりじゃだめだと思う」ってのはほんとその通りですね」

レジー「ねえ。このインタビューは2012年の夏ごろだけど、ますますそういう傾向強まってる気がするわ。で、このドラゴンアッシュとAKBって話をもうちょい続けたいんですけど。この前リリースされたドラゴンアッシュの『THE FACES』というアルバムですが、冒頭に『The Show Must Go On』という曲が入ってます」

司会者「アルバムのテーマ曲的な位置づけですね」

レジー「そうですね。Kj自身も座右の銘だと言っている言葉です。以下はMUSICA2月号のインタビュー」

---この言葉、馬場さんが亡くなった2ヵ月後くらい、つまり2012年の6月末に、”Run to the Sun”の配信リリースに際してウチで記事を作るにあたって建志さんに直筆のメッセージが欲しいってお願いしたんですよ。で、色紙に書いてもらったんですけど、その時に書いてくれたのが、まさに「The Show Must Go On」というひと言で。

Kj「あ、その時からすでにあったんだ!・・・ヤバい、間違った認識のまんまインタヴュー30本くらい受けたわ(笑)。そっか、そんな早い段階からあったのか」

---その時に曲ができてたかどうかはわからないですけど。

Kj「いや、曲はなかった。俺の中の座右の銘だよね」

---なるほど。このスローガンこそが、今回のアルバムの芯であり、そして今のDragon Ashを走らせるものだと思うんですが。

Kj「間違いないね」


司会者「”The show must go on.”、辞書的には「止めるわけにはいかない, 問題があっても続けなければならない」という意味です。ショーは誰かがセリフを間違えても止めることはできないし、いろんなトラブルがあっても続けなければならない。そこから転じて、一般的な物事においても同様に事情があってもやりとげなければならない、という意味で使われる言葉のようです」

レジー「これよりもずいぶん前に『Life goes on』っていう曲もあったけど、あのときの「人生は続く」っていうメッセージよりも強い言葉だよね。で、この「The show must go on」って言葉を聞いたときに最初に思い出したのがAKBのことで。2012年の彼女たちのドキュメンタリー映画のタイトルにこの言葉が使われてます」

司会者「『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』ですね。震災以降の取組み、3回目の総選挙と西武ドーム公演、アイドルの恋愛を巡る問題などが取り上げられています」





レジー「シリアスな現実があってもそれと向き合いながらこのグループは前に進んでいくんだ、という意味合いがこめられたタイトルなんだと思う。で、もちろんKjがこの言葉に行きついたきっかけだったと思われる大事なメンバーの死って話とAKBについての「シリアスな現実」ってのはレベル感が全く違うけど、どちらのグループもいろんな毀誉褒貶に晒されながら今のポジションを得たわけですよね。全くベクトルの違うことをやってるグループだけど、KjからはたまにAKBを意識しているような発言があって、その2グループが掲げたメッセージが同じ言葉に帰着してるってのは不思議な偶然だなあと思いました」

司会者「ドラゴンアッシュもブレイク当時はロック側からもヒップホップ側からもディスみたいなものがあったわけで」

レジー「そうね。そんなこと考えながら改めてあのドキュメンタリー見てると、この2つのグループの足取りってなんか重なる部分もあるんだなあとか思ったんですよね。あの映画で西武ドームでの『フライングゲット』披露ってシーンがあるんですけど。2回目の総選挙で大島優子に負けた前田敦子が3回目で1位に返り咲いてセンターの座を獲得した曲が『フライングゲット』で、それをコンサートで歌う直前にあっちゃんは過呼吸やらなんやらの体調不良に襲われて。この日のコンサートの前から心労がたたって全く本調子でなかったあっちゃんだけど、「あの」選挙で勝ち取った曲だからこそここでステージに出ないわけにはいかない。ぼろぼろの状態で出ていって、踊れるのかあっちゃん!?って感じだったのに曲が始まると渾身の笑顔でパフォーマンスをする、っていうなかなか凄まじい映像」

司会者「あの映画のハイライトの一つですね」

レジー「うん。で、これって言ってみれば99年横浜アリーナ公演の『Viva la revolution』だと思うんですよ」

司会者「はあ」

レジー「いろんな批判を受けて、ダメージを受けながら大きな支持を勝ち取った場所での勝利宣言。歌詞をあらためて見ると、このKjの言葉があっちゃんの姿とリンクするなあと」

ここに立ってる意義が欲しかった だから僕達必死で戦った
勝ちとった 小さなプライドポケットに詰め込んで またここに立ってみる
すこし誇らしげな顔の自分がいる
満面の笑みを浮かべているキミ達がすぐ目の前に見える
(『Viva la revolution』)


司会者「AKBの歌詞は一人称が「僕」の曲も多いし、そう考えると彼女たちの自己言及系の曲の歌詞って言われてもおかしくないかも」

レジー「今回のアルバムについても、僕は『Golden Life』から『Walk with Dreams』の流れがすごく好きなんですけど、この辺で歌われてることも勝手にAKBに重ね合わせながら味わってました。負けたり叩かれたりしてもそれを糧にしていく感じとか、「夢」みたいなものに対するスタンスとか、彼女たちのサウンドトラックになり得る歌だなあとか思ってたんですけど」

儚過ぎる青に 嘆いたあの夜も
星の見えぬ空 向こう照らし出す
the golden life is once
打ちのめされた日も優しくされた日も
僕らの富となる
(『Golden Life』)

ここは居場所なんてないって 本当は皆ほら使い捨て
そんな感覚 抱くよかstand up 一人一人が丸四角三角
滑稽でもそれでもいいさって OK何処へでもfree styleで
思い描いて意外な構図 誰も真似できない未来予想図
それぞれが持つダイヤモンド 一つも同じではないだろ?
そう胸張って舵取り歩く これが夢さって足取り軽く
(『Walk with Dreams』)




司会者「そんなに何でもうまくいかないっていう諦念みたいなものがありながら、それでも前に進んでいこうとする、進んでいくしかないっていう姿勢はもしかしたら重なる部分があるかもしれないですね。KjがインタビューでAKBの話をしてたのも、そういう部分へのシンパシーがどこかにあるのかもしれないというか」

レジー「もちろんどこまでいっても推測の話でしかないけど、「タフに戦っている」人たちの足取りは思わぬところでリンクするんだなあなんて思いました」

司会者「わかりました。ぼちぼちまとめに入りたいのですが、実際問題としてこの2つのグループが接触する可能性とかあるんですかね」

レジー「いやー、どうなんだろうね。アイドル界隈でこれだけロック人脈の活用が進んでるのに、48グループはなかなかそういうことしないわけで」

司会者「ノースリーブスの取組みも単発で終わった感じですね

レジー「だから可能性は薄いと思うけど、Kjって女性ボーカル活かすのほんとはすごく得意じゃないですか。それこそSugar Soulの『Garden』もKj作だし、持田香織との絡みもあったり」




Dragon Ash - wipe your eyes feat... 投稿者 ASHIKASAN

司会者「Kjがアイドル曲書いたらそれこそ大事件になりますね」

レジー「うん。で、格的なことを考えるとそれをやれるアイドルはAKBだけのような気がするんだよね。組閣だなんだってそんなことで賑やかしするなら、楽曲関連で衝撃を与えてほしいです。ま、グループの構造上それがあり得ないことはもう十分わかってますけど、言うのは勝手ということで。今回はこんな感じでいかがでしょうか」

司会者「わかりました。次回はどうしますか」

レジー「ちょっといくつか気になってる新譜があるのでそんなことをやるかもしれないです。仕込んでいる企画もあるので予定は未定で」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」
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たかが紅白、されど紅白、そしてサカナクションがその地を踏んだ意味

司会者「休みも終わって仕事も通常営業になってますが」

レジー「すでに年末が遠い昔に感じるわ。今回の年末年始休みは体調万全でもなかったから例年よりも家にいた気がするね」

司会者「その分年末の音楽番組しっかり見れましたね」

レジー「そうね。珍しくMステスーパーライブもリアルタイムでがっつり見たよ。でもなんかこの前のはいまいちだった気が」

司会者「そうなんですか」

レジー「全体的に雑な印象を受けました」







司会者「12年のMステはすごい良かったのにね」

レジー「あのときは桑田佳祐とかB’zとかピークポイントがはっきりしてたんだけどこの前のはほんと散漫だったわ。ツイッターでマンウィズマンウィズ騒ぎながら他のアクトディスってるロキノン厨が面白かったくらいだね。一方で今回すごく良かったのが、これも毎年恒例の「クリスマスの約束」ね」

司会者「小田和正さん仕切りの番組です」

レジー「あの番組、たまに「感動の押し売り」みたいになってる年があってそういうときはいまいちだったりするんだけど、今回はそんなのが全然なくて良かった。吉田拓郎かっこよかったし、いつもの面々は相変わらず聴かせるし、そして何と言っても桜井さんね」

司会者「登場シーンの客席の沸き立ち方に「国民的スター」感がありました」

レジー「うん。で、2人共作の『パノラマの街』がほんとに素晴らしくてねえ」

司会者「あれは良かったですね」

レジー「曲調も歌詞のテーマも『HOME』期の感じがしたんだけど、気負いなく作ればああいういち生活者に寄り添った名曲がさらっとできちゃうんだよねあの人は。そう考えるとその才能をスポイルしてるのは誰なんだって話ですな」

司会者「小田さんともマッチしてましたね」

レジー「桜井さんの歌詞特有の説教臭さは随所にあったけど、小田さんの透き通った声で歌われるとそんなに気にならないんだよね。いいバランスだった。YouTubeにはなくて貼れませんが、聴いてない方はぜひ聴いていただきたいです

司会者「あとは紅白ですね年末で言うと」

レジー「今回の紅白ほんと面白かったよね」

司会者「やっぱりあまちゃんですかね」

レジー「幸いにしてドラマ見てたので大興奮だった。ユイちゃんが東京に!とか春子さん!とか騒いでたからあのコーナー終わるときにはかなりぐったりしてたね」

司会者「はあ」

レジー「あと大島優子の卒業発表は単純に悪手だった気がしました。あまちゃん押しと北島三郎とかで番組自体がハイカロリーになるのは予想できてたわけで、あそこであんなこと言っても流れちゃうよねえ。元日のスポーツ新聞1面になってもその日テレビの露出少ないからあんまり意味ない気がするし。ファンがたくさんいる前で言った方が誰にとっても幸せだったんじゃなかろうか」

司会者「紅白ネタだと年明けいろいろネットで炎上してましたね。リアルサウンドのやつとか」

レジー「あれリアルサウンド上で削除された後も配信されてた別媒体では読めたんだけど今はそれもなくなっちゃったのね」

司会者「読んでみてどうでしたか」

レジー「うーん、面白いか面白くないかで言ったら面白くなかったけど、あんなにみんなで叩く記事なのかはわからなかった。どう考えてもふざけたノリの記事なわけで、あれに対して「まじめに聴け!」「俺の方が愛をもって書ける!」とか言ってる人たちほんと何なんだろうと思った」

司会者「その後謝罪文のようなものも出ました

レジー「せめて記事削除と同時に出せばよかったのにね」

司会者「あとこんなのもありましたね」

なぜ紅白は、演歌歌手の後ろにアイドルをはべらせるのか

レジー「これね。個人的には「アイドル=高級クラブ(もしくはキャバクラ)」って比喩を使ってる文章に出会うと読む気が大幅に減退するんだけど、あまちゃんの演出についてはその通りだなあと思いました。それよりも気になったのはここ」

「まぁ大晦日くらいは演歌でも見てやるか」という態度に始まり「まぁこういうのもあっていいよなニッポンは」とそれなりの納得をして年が暮れていく、これが、演歌の苦手な若年層が繰り返してきた、演歌を許す柔軟さだった。

司会者「この文章書いてる武田砂鉄さんは82年生まれです」

レジー「僕とほぼ同世代なんだけどまったく共感できなかった。この「若年層」ってどこの誰を指してるんだろうってのがすごい謎でした。きっと紅白って、こういう「バーチャルな「古き良き日本」」みたいなものを勝手に読み込みがちなんだよね。ちょうど年明け早々に『紅白歌合戦と日本人』という本を読んだんですけど、ここにも「紅白=安住の地」っていう話がやたらと出てきて」



司会者「紅白に日本人としての「コミュニティ」があるみたいな論旨でしたね」

レジー「この辺に紅白歌合戦というテレビ番組のすごくアンビバレントな面が現れてる感じがして。引いた視点で見ると、コンテンツとしては紅白ってそこまでスペシャルではないんですよね。この前のあまちゃんみたいなのは一種の例外で、それこそ他の年末特番の方が豪華だったりする年もあるじゃないですか。かつては「対決」っていう特別感あったのかもしれないけど、今ずいぶんそこも後退してるし。前掲書から引用します」

一九九四年と九五年に司会者としてコンビを組んだ上沼恵美子と古舘伊知郎による、対抗意識をむき出しにした丁々発止のやり取りは、古き良き時代の「紅白」を彷彿とさせた。しかし男女対抗戦という形式は、実はすでに一九九〇年代に入ったところから揺らぎ始めていた。
まず、一九九〇年ごろから、オリンピックを模した開会式が行われなくなった。優勝旗返還も選手宣誓も、なくなったのである。これによって、スポーツをモデルとする歌合戦によって男女平等を実現するという「紅白」の基本コンセプトの一つが、後景へ退くこととなった。


司会者「1979年、水前寺清子さんが司会の時の話とか同じ番組とは思えません」

司会を務めることに決まると、水前寺は紅組の歌手全員と会うことにし、本番でどのように紹介してもらいたいか、セールスポイントは何かを取材した。歌手たちのビデオも何でも見返した。当日は紅組出演者に自前で弁当を配ったり、カメラマンを手配してスナップを写真を撮ったりした。
水前寺清子のそうした熱意に触れて、出場者たちの気持ちは「紅組勝利のために」から「チータを勝たせるために」へと高まっていった。


レジー「番組内容だけで言えば紅白だって歌番組の1つに過ぎないし、MステスーパーライブやFNS歌謡祭と比較してどっちが面白いか?って視点だけでいいはずなんですよ。でもたぶん実際にはそうはなっていなくて、紅白に何かしらの特別感を見出している人が多い。たとえば例のリアルサウンドの記事が同じ内容でFNS歌謡祭を対象にやってたらここまで炎上しなかった気もするんですよね」

司会者「「AKBと三谷幸喜→トイレに行ってたので見ませんでした」ならそんなに問題にならなかったかもですね」



レジー「ここはもしかしたら人によって感覚が違うかもしれないけど。で、今年初出場だったサカナクションの山口さんが紅白のそういう特殊性みたいなものを言い当てていて」

まだ紅白出たわけじゃないけど、決まってからいろいろわかったのは、紅白って出たら「おめでとう!」って言われるんだね。

それすげぇなと思って。俺の中では紅白ってフェスなんだよね。音楽お祭りなんですよ。たとえば、ROCK IN JAPANとか出ても「おめでとうございます」って言われるわけないじゃん。だけど紅白に出ると「おめでとうございます」って言われるって、すげぇなって。こんなものがまだ日本にあるんだって思った。

(MUSICA2014年1月号 山口一郎の珍事砲弾)


司会者「こういう特別な空気を感じながらサカナクションは紅白に乗り込んだわけですね」

レジー「うん。今回の紅白出演にあたって、山口さんは「レペゼンバンドシーン」みたいなものを明確に表明していました。発表時の記者会見とか

あまりテレビに出てこなかった僕らのようなバンドが紅白歌合戦という大きな舞台に呼んでいただけるというのは、バンド界にとって勇気になるかと思いましたし、出るからには何か面白いこと、楽しんでいただけることを精一杯やらせていただきたいと思います。

司会者「番組のサイトのコメントにもそういう意識が出ています」

初の紅白歌合戦。ロックバンドとして何かしら爪跡を残せたらなと思っております。(山口一郎)

レジー「一貫してるね。で、最近の紅白における「初出場のバンド」っていうのがどういう意味合いを持っていたのかってのを確認すべく、おそらく個人の方のページだと思うんですがこちらのサイトをソースにして97年以降の「紅白初出場バンド」の一覧を作ってみました。97年ってのはたまたまここに載ってたというだけで特に意味はありません」

kouhaku.jpg


司会者「毎年1つか2つなんですね」

レジー「これざーっと見てもらって、サカナクションの歪さというかこれまでの流れと違う感じを理解していただけますでしょうか。グレイラルクルナシーみたいな大きな時代の潮流だったり、超大物出演としてのミスチルや復活ネタのプリプリ、沖縄復帰30周年のBEGINや震災絡みでの猪苗代湖ズのような社会的トピックとしての出演、あとはほとんどが一発ヒット曲が出たり飛び道具的な強さがあったりというどちらかというと「芸能」的な位置づけでの出演。こういうものと今回のサカナクションは一線を画してるというか、明確に「フェス」とか「音楽雑誌」みたいなものに軸足を置いたバンドが出るケースって実は今までほぼなかったんだよね。少なくとも計測した範囲内では」

司会者「そもそもこの手の人たちは紅白に出たがらないみたいな話もありますよね。直近だとバンプ出演のガセ報道なんてのもありましたが」

レジー「そういう流れに一石を投じたい、ってのも今回の出演なんだよねきっと。2012年の段階で山口さんはこういうことを言ってます

──山口くんの言う「メディア」って、テレビとかを指してる?

そうそう。前回「ミュージックステーション」に出たとき、面白かったんですよ。出たってことも面白かったし、周りの反応も良かったし。その理由も検証したけど、テレビを見たあとにYouTubeに行くんですね、みんな。そこでこのバンドはどういうミュージシャンなのかって情報をすぐ手に入れられるようになってる。逆にミュージシャンは、お客さんが「Mステ」を観たときの反応をTwitterなんかで即座に知ることができる。そのリアルタイム性も現代っぽいなと思ったんです。だから1990年代~2000年代に表に出ないのを美学にしていたバンドの手法を踏襲しても、それ以上の効果は得られないと思ったし、今の時代っぽくないなと考えて。だったら今あるツールを利用して表に出ること、それ自体が表現としてアリだなと思ったんです。僕がいつも言う「戦略すら表現」って部分に転化できるんじゃないかと。

(ナタリー 『僕と花』リリース時インタビュー)


司会者「「あえてテレビ出ない」みたいなのは違うんじゃないかと」

レジー「この辺は最近だとtofubeatsのスタンスとかにも近いよね。もったいぶらないでどんどん発信していくことこそパイの拡大につながると。だからMステにもスマスマにも出て。そういう動きの集大成が紅白だったわけですよ。いろんなトライが最高の舞台で結実したわけで、グッときました。で、今回のポイントはもう1つあって。サカナクションは13年が初出場だったけど、12年の段階で「山口一郎」って名前だけは紅白デビューしてるんだよね」

司会者「SMAPが山口さん作の『Moment』を歌いました」

レジー「そう、SMAP。さらに遡ると、SMAPは11年でも大トリをやってます。震災のあった特別な年の最後、多くの人が“「日本」というコミュニティ”の存在を意識してしまう紅白という場で、SMAPは『not alone』、「きみを 想いを ぼくがひとりにさせない」「あの日 ぼくたちは もう一度生まれた」と歌って、さらに『オリジナルスマイル』で前向いて笑っていこうぜってメッセージを発信したわけで。それで復興が進んだり原発問題が片付いたりしたわけじゃないけど、僕あのステージ見ててすごく感動したというか、SMAPが2011年という年に区切りをつけたなって強く感じました」




司会者「その翌年も大トリ、『Moment』と『さかさまの空』の2曲を歌いました。オリンピックのテーマソングと朝ドラの主題歌、これもどちらも“「日本」というコミュニティ”につながるモチーフですね」

レジー「そう。「日本」という枠組みが読み込まれがちな場としての紅白歌合戦で、SMAPは2年続けて「日本の精神性」みたいなものを表現するパフォーマンスをしたわけで。で、そこに連なる楽曲をSMAPに提供した山口一郎率いるサカナクションというバンドが、これまで初出場したバンドとは異なる価値観を背負って紅白に出たと。つまり、今回のサカナクションは単にロックバンドとして新しいことをやったというだけじゃなくて、SMAPを介して「震災以降の日本のポップミュージックの歴史」にはっきりと足跡を残したっていう意味合いもあったと思うんです。これはものすごく大きな越境というか、単に「若者に人気の尖ったバンドが紅白に出た」ということにとどまらない価値があるんじゃないかと。それをいつもと同じやり方でぶちかましたサカナクションにはほんとに感動させられました」

司会者「すごい興奮してますね」

レジー「いやー、そりゃ興奮するでしょ。自分としては、2部があまちゃんなら1部はサカナクションだった。繰り返しサビ前で山口さんが「こうはくうたがっせーん!!」って叫んだときはまじで涙腺決壊だったわ」

司会者「普通のロックバンドは叫ぶことを許されない言葉ですからね」

レジー「うん。なんかさ、JAPANとかMUSICAとか読んでると「○○を聴いた瞬間ガッツポーズを抑えきれなかった。」みたいなレビューたまにあるじゃないですか」

司会者「あーあるある」

レジー「ああいうの見るたびにこの人は何を言ってんだろうって思ってたんだけど、今回初めてその意味がちょっとわかった気がした。全然部外者だけどやったー!!みたいなね。Mステ見てる時に発見したツイッターでマンウィズマンウィズ騒いでるロキノン厨の気持ちがわかった」

司会者「そんなサカナクションは早速ニューシングル『グッドバイ/ユリイカ』を発売します」





レジー「年初早々に年間ベスト入りそうな曲がきましたね。で、ここに至る前に去年彼らは『sakanaction』ってアルバムを出してるわけですが、この作品は先日から話題になってる「ネットの音楽オタクが選んだ2013年の日本のアルバム」で2位にランクインしてます。というわけで、次回はこのランキングについて掘り下げたいと思います。今回はこの辺で」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

THE NOVEMBERS 小林祐介インタビュー(後編) バンドの現在地と進むべき道

司会者「前回に引き続き、THE NOVEMBERSのフロントマンである小林さんのインタビューをお送りします」

レジー「今回はニューアルバム『zeitgeist』(ツァイトガイスト)の話から派生して、小林さんのルーツの話だったり、今のシーンにおけるTHE NOVEMBERSの位置づけだったりについて触れています。それではどうぞ」

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---ちょっと話がそれるかもしれないんですけど、ニューオーダーやファクトリーの話とか、以前の「女性ボーカルのカバーアルバムを作りたい」なんてツイートとか、音楽そのものについての発信を小林さんは積極的にされている気がしていて。




「はい」

---個人的には、今のバンドの人たちってあまり音楽の話を発信していないんじゃないかって感じる部分があって。ツイートも「今日ライブ良かったです」とかだけじゃなくて、もっと音楽の話をすればいいのになあと思うんですが、小林さんが自分のルーツみたいなものを開示していくのは何か考えがあってのことなんですか。

「今は意識してやってますね。反例から話すと、ルーツを明かさない人って自分の出所を明らかにすることで自分の表現が成立しなくなる、暴かれてしまうっていう恐怖だったり、あとは友達のバンドを誉めたらお客さんがスライドしてしまう、共食いになるんじゃないかっていう心配だったり、そういうのがあるのかなと。僕はそういうことにはまったく執着がなくて、自分が影響を受けたものを日常に忍ばせて発信することで一つのきっかけが生まれればいいなと思います。僕が言うから聴いてみようかな、とファンの方に思ってもらえたら光栄ですし」

---さっき共食いっておっしゃってましたが、たぶんそういうことやるのって共食いじゃなくてパイが広がる方向に行くと思うんですよ。

「ほんとそうですよね」

---カバーアルバムはぜひとも聴いてみたいです。

「五輪真弓さんの1stとかすごく好きなんですよね」



---ルーツの話が出ましたが、最初にちょっとラルクの話をしたんですけど、今回こういう機会をいただいたので改めてラルクのアルバムを全作聴き直してみようかと思いまして。

「おお、素晴らしい!(笑)」

---で、ちょっと自分の経験の話になってしまうんですが、99年に『ark』と『ray』が出てますよね。久々に『ark』を聴いたとき、冒頭にシングル曲が集まってる展開がすごいなと思ってテンションが上がったんですけど、99年当時僕はこのアルバムちゃんと聴いてなくて、さっと流してスルーしてたと思うんですよ。なんでだろうなと思ったときに、当時の自分って97年98年あたりに出てきたギターバンド、くるりとかスーパーカーとか、そういう方に熱意がいっていて。

「ああ、なるほど」

---「ラルクってビジュアル系じゃん」みたいなのを勝手に作ってしまって、ちゃんと聴いてなかったなあと。あの時代ってそういう雰囲気というか、音楽好きな人の中で空気としてラルクにアゲインストになっていた部分があったんじゃないかなと思いました。で、今回のインタビューに引き付けた時に、THE NOVEMBERSが置かれている状況ってあの頃のラルクとちょっと近いものになっているんじゃないかなと。今ってBPMが早くてパワーコード主体で拳を突き上げられることが大事みたいな雰囲気がシーン全体を塗りつぶしつつあるような感じがしていて、そんな中でTHE NOVEMBERSはクオリティ高く真逆のことをやろうとしているけど気づいてもらえないというか、そういうような状況になってしまうのではないかということを思ったんですけど。小林さんは最近のバンドの曲も聴かれてると思うんですけど、「ノリ」「一体感」みたいなものがますます重視されていく中で今回のアルバムのような音を鳴らすことに対して、思うところだったり、もしくは「こういう風になってほしい」とか、何か感じるところがあれば教えていただきたなと。

「具体的にこうなってほしいみたいなものはないんですけど・・・聴いてくださる方にとっての豊かさにつながる一つの気づきとかきっかけになれたらいいなと思ってやっているだけではあるんですが。そうですね、たとえばTHE NOVEMBERSのライブに来てくれるお客さんが拳を突き上げないとかそもそも上着を脱がないとかヒールで来るとか、そういう形でライブに来ることを本人たちが楽しんでくれたりそれが自然なんだったら尊重したいというか。そこに関しては時代的に合う合わないとかっていうのは客観的に考えれば恐らくあると思うんですけど、だからどうっていうのは特に考えていなくて。時代にマッチしていこうってことも目的になるとは思えないし、拳を上げる人たちを否定するのは簡単だし自分はそういうことはしないけど、否定する理由にはなっていないというか」

---そうですね、別にそれが悪いことではないですしね。

「まあただそうしない人は今では圧倒的に少数派だし、今の時代の「楽しい」という表現の反対だったりもするので、「動かない・踊らない」ってことが「楽しくない」ってこととは決してイコールではないという問いかけをしているというか。「音楽を聴く」ってことは「音楽を聴かない無音の時間も楽しむ」ってことと裏表だと思うので。曲中の演出だったり、音が止む瞬間を大事にするとか」

---うんうん。

「先ほど出た「ラルクのアゲインストな状況」には僕らはまだ到達できていないと思っていて。ラルクは巨大な存在になったからこそってところがあるけど、僕らはまだ気づかれていない悲しさがあるというか。いっそのこと、THE NOVEMBERSを聴くことがアンモラルであるくらいの巨大な社会現象になったらいいなとか」

---マリリンマンソンのTシャツを着て逮捕されるみたいな(笑)。

「世田谷区では聴けないらしい、とか(笑)。そういう状況になれればなれるほどやりがいは感じますね。単純に自分たちは現状ではわかりにくいところにいると思うし、それを選んでやってきてしまったのは自分たちなんで、そんな現状をいい方向に転がせたらいいなと思います。信念を曲げずにどこまででしゃばれるか」

---今の「もっともっと聴かれていきたい」という話に関連しての部分になるんですが、今作の流通形態(注:THE NOVEMBERS公式通販サイト、ライブ会場、bandcamp、iTunes store、spotify、及びTHE NOVEMBERSがセレクトしたレコードショップ等の小売店のみの販売予定)についてもお聞きしたいと思います。やり方としては「間口を絞る」方向にいっていると思うんですが、純度は高くなる半面「誰しもに知られて、その中でバックラッシュも受けながら大きくなっていく」というところとは少し離れる部分もあるのかなと。そういうことも踏まえて今回の売り方をするに至ったきっかけなどを教えてください。

「意思を持って何かを選んだお店って世の中にたくさんあると思っていて----厳密に言うとどの店もそうだと思うんで一概には言えないですけど、何でもある量販店ではなくて「選び取ったものが置いてある」、そういうカラーのあるお店があるんだよということを単純にお客さんに知ってもらえたら、発見とか出会いになるかなと。そういったお店の意思を、『zeitgeist』を通じて感じてもらえたらいいなと考えています。加えて、お客さんに直接手渡ししたいって言う意思で直販をやったり、海外を見据えてバンドキャンプで出したりとか。これをやるのって独立第一弾でしか説得力がないと思っていて。後でやったらただ規模縮小したってことになってしまうし、だから今しかできないぜいたくをちょっとリスキーだけど楽しもうと。もちろん『zeitgeist』の販売店も徐々に拡げていく予定ではあるんですがまずはここから始めたい、という」

---名前のあるバンドがこういうチャレンジをするのはすごく大きいですよね。THE NOVEMBERSがこれをやることで、他のバンドもこういうことやっていいんだっていう気付きが生まれたら面白いと思います。

「そうですね。一度レーベルや事務所を離れたことで保証やつながりがなくなったと同時にしがらみもなくなったとすごく感じていて。いろいろなことをリセットしたうえで、その状況から改めて選び直すことができるというのが今回の取組みを行ううえでは大きいですね」

---そういうやり方をする中で自分の届けたいところに届きそうだという確信はありますか?単純にリーチが狭くなるという不安もあるとは思うんですが。

「届けたいところに届くかどうかっていうことに関しては、確信はなくて。自分たちの意思を反映させて流通経路を狭くした部分はあるので、そういう意味では届きにくいとは思うんですよ。ただやっぱり作品のテーマ自体が問いかけだったり提案だったりするので、それを態度として出したかった。あれこれ販売経路を網羅して用意するのは何も選べていないというのと一緒ということになってしまうんじゃないかなと。どこでも買えるってだけでたくさんの人が買うわけではないじゃないですか。ある一定のかたまった人たちが散り散りになるだけで」

---それはその通りですね。

「おそらくいろんな企業が努力していることっていうのは販売経路を広くあまねく用意することで取りこぼしをなくそうっていう取り組みだと思うんですけど、それがいい方に転んでる時とそれをやっても仕方ないんじゃないかって思う時があって。その時々にあった方法を考えていくにあたって、今回は作品のテーマとか自分たちの置かれている状況とかを踏まえてこういうやり方をとることにしました。仮に届かないところが多かったとしても『zeitgeist』は今後も売られていくものなので、届かなかったところが多い=世の中は穴場だらけってポジティブに考えることもできると思うし。あまり広まっていないってことはどこに行ったってこれ知らないだろって言えるし、知ってた上で買わなかったら知ってくれてありがとうとしか思わないです」

---今お話を伺いながら、音楽産業は「広くあまねく」みたいなことをやりすぎて、本来はアーティストの人たちが丁寧に作った一つのものが根幹にあるはずなのに、そういう前提を忘れてマスプロダクトになりすぎていたような側面があったのかなと思いました。今回のTHE NOVEMBERSの取組みは、そういうものに対してもう一度音楽を作り手の側に取り戻すとか、そしてそれを届けたい人に届けるとか、そういう「運動」のようなものなんだなと感じました。これをやるうえで今回の作品の「問いかけ」というテーマはマッチしてますよね。これで単に耳触りのいいものだったら「広く売ればいいじゃん」って話になると思うので。

「僕もそう思いますね。パッケージされて値札のついた商品がマスプロダクトとして流通するというのとは別の文脈で、ただ音楽として楽しみたい人にも伝わっていくような、そういう状況を長い目で実践していけたらいいなと思います。どちらにせよ届いているということなので」

---まずは何かしらの形で聴いてもらうっていうところですね。

「そうですね。トーフくんがやってるパッケージを横断して音楽を拡散してる感じとか、やっぱりすごいなと思うので」

---tofubeatsさんの話が出ましたが、活動スタンスや音楽性などでシンパシーを感じる同世代の人はいますか。さっきはの子さんの名前が出てましたけど。

「好きなバンドとか仲良い友人とかはたくさんいるんですけど、その人たちのことを一旦置いておくと、PLASTICZOOMSってバンドとかLillies and Remainsってバンドですね。皆自分たちと同世代で東京にいて、ポストパンク/ニューウェーブとかゴスとか70sパンクとかそういうのを聴いていて、かつファッションとか思想とかのライフスタイルそのものが肌が合うというか。その3バンドで1つの価値観を世の中に提示していって、それについて好き嫌いを言ってもらいたいなあとかって感じてます」





---なるほど。

「あと世代はちょっと若いと思うんですけど、Sapphire Slowsっていう女の子をいいなと思っています。最近女の子の表現するものが形骸化されてきている印象があって。アイドルとかはいろんな文化がクロスオーバーしてクリエイティブだなと思うものもありますけど、女の子のバンドものとかエレクトロとかっていうのが得てして退屈というか、着せられてるというか・・・沢山聴いているわけじゃないけど、そんな印象です。Grimesみたいな流れで、自分でも簡単にベッドルームで音楽作れちゃうっていうのが日本のいろんなところですでに起こってるんじゃないかなと思うので、そういう雑多な状況がもっと表面化してきたら面白いなと思ってます」



---いくつかのバンドの「かたまり」としての見え方も、リスナーにきっかけを提示するうえでは大事ですよね。THE NOVEMBERS聴いてる僕の友人も聴き始めたきっかけはTOMOEのツアーだと言っていました。

「ああ、People In The Boxとtacicaの」

---はい。そういう価値観の近いバンドの組み合わせが見えてくると、もっと広がっていくのかなと思います。

「そうですね。tacicaとピープルは5、6年来の盟友というか。今となっては枝分かれしてそれぞれが別々の表現のフィールドで活躍しているのが面白いなと思います」

---ちょっと前にGalileo Galileiの尾崎さんがTHE NOVEMBERSのことをいいって言ってましたよね。

「あれは嬉しかったですね。雑誌で機材紹介やってるのを見てこの人たちはもしかしてものすごく凝ったことをやってるんじゃないかって思って聴き直したら、日本でポップな音を鳴らすってことを念頭に置きながらも「音楽性がすごく高いな、研究してるんだろうな」っていうことをやっててすごくシンパシーを感じました。彼らはOGRE YOU ASSHOLEみたいに、地元に帰ったことで独自の進化を遂げていくんじゃないかなと思ってます」

----わかりました。では最後に改めて、今回の作品について言い残したこととか強調したいこととかありましたらぜひ。

「そうですね、THE NOVEMBERSのイメージがある人ない人両方いると思うんですが、まずは聴いてもらって、好きとか嫌いとかどうでもいいとか思ってほしいです。それ以上のことはないですね」

---ありがとうございました。

「ありがとうございました!」

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司会者「インタビューを終えていかがでしたか」

レジー「そうですね、ご自分の言葉を持ってらっしゃる方だったので話していて楽しかったです。音楽に対する愛情もしっかり伝わってきたし。今回は作品の話だけじゃなくて、こういうシーンの状況でバンドとして何をしていこうと思っているか、そのときに仲間というか精神を共有できるような人たちはいるのか、みたいなことを聞きたかったので、そのあたりについても詳しく聞けて良かったです。流通のやり方も含めて、今回のアルバムがどういう形で浸透していくのか楽しみに見守っていきたいと思います」

司会者「小林さんのルーツについてはこちらの記事にも詳しいので合わせてご参照ください。では次回はどうしますか」

レジー「そろそろ年間ベストの季節に突入する感じなのですが、できればもう1回くらい違うネタやりたいな。まとまり次第って感じで」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

THE NOVEMBERS 小林祐介インタビュー(前編) ニューアルバム『zeitgeist』とそこに息づく哲学

司会者「土曜日こんなツイートがされていましたね」




レジー「はい。というわけで、今回と次回の2回にわたって、THE NOVEMBERSの小林祐介さんのインタビューをお届けします」

司会者「THE NOVEMBERS は11月30日に新しいアルバム『zeitgeist』をリリースします」

レジー「インタビュー自体は10月末に実施したのですが、このアルバムのインタビューとしては最初に行ったものです。作品の話はもちろん、今の音楽シーンについてだったり小林さんのルーツについてだったり、いろいろとお話ししてきました」

司会者「前編となる今回は、主に新譜『zeitgeist』の楽曲について、さらにはその背景にある思想に関してお話しいただいています」

レジー「THE NOVEMBERSに関与のない方にも面白いインタビューになっていると思いますのでぜひ。それではどうぞ」

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---本題に入る前に、小林さんはラルクがとても好きとお聞きしまして。

「はい」

---僕が人生で初めて行ったライブがラルクなんですよ。96年の武道館で、『flower』が出る直前でした。中学3年生の時。

「ああ!sakuraさんがいたとき」

---そうですそうです。そこで『flower』が初披露されて。

「じゃあhydeさんがオレンジ髪のおかっぱみたいなときで」

---たぶんそうだったと思います(笑)。

「毛皮着てましたよね」

---さすがです(笑)。あとでそんな話もしたいなと思ってます。では早速新しいアルバム『zeitgeist』についてお話を伺いたいと思うのですが、レーベルから独立して一作目のアルバムですね。

「はい。『zeitgeist』を作っている過程で独立が決まりまして」

---ああ、そうなんですね。

「今年の5月くらいからレコーディングが始まって、夏くらいに独立することが決まって。なので、「独立する」ということに向けて楽曲制作がどうこうというのは特になかったんですが、歌詞にはそういう状況が現れていたのかなと思います」

---特別な手応えみたいなものはありますか。

「THE NOVEMBERSの歴史の中でも一番「焦点が合った作品」が作れたかなという自負はあります。道徳的なものや倫理的なもの、そういうテーマを追求できたかなと。具体的には、世の中に対して----たとえば音楽シーンに対して、自分を取り巻く環境に対して、それこそ今の時代に対して、否定するというのではなくて「こういう価値観もあるよ」という投げかけであったり、疑うことなく漫然とルーティンとしてやってきたことを一呼吸置いて考えた方がいいんじゃないかっていう問いかけであったり」

---『GIFT』と『Fourth wall』でそれぞれ音楽的に両極に振ったような作品をリリースしたことで今回ど真ん中に行けたというような意識は小林さんの中にはありますか?

「はい、あの2作品があったからこそこの作品を作れたというのはあると思います。『GIFT』と『Fourth wall』については、自分なりの知的好奇心みたいなものをテーマにある意味では実験的に作ったんですけど、『zeitgeist』はあの2作品のまとめというか」

---先ほど歌詞には独立など自分たちを取り巻く環境の変化からくるものが反映されているというお話もあったかと思いますが、いただいた歌詞を見ながら今回のアルバムを聴いていると、言葉が自分の中にぐさぐさ入ってくるような感じがあって。特に気になったのが、何度か出てくる「選ぶか選ばないか選べ」ってフレーズなんですけど。さっきも小林さんがおっしゃっていた「何でも漫然とルーティンでやっていくことへの問いかけ」みたいな意識が集約されている言葉かなと思ったのですが、この歌詞に行きあたったきっかけというか問題意識について教えてください。

「震災以降というとちょっとありきたりですが、それくらいの頃に自分の中で芽生えた考え方です。「何かになりたい」と言うときに「自分自身である」っていう前提を置かないままになりたいものを選んでしまうとか、「自分の今の足元はここだ」っていう前提のない人はどこかに行ったとしてもどこにも行ったことにならないんじゃないかとか、そんな意味を込めています。自分以外の人生を選ぶということはできないわけで、生きていく中で「自分自身を選び取るのか」「自分自身すら選び取らないで何にもならないのか」ということを選ばざるを得ないということを言えればなと」

---やはり震災の影響は大きかったですか。

「そうですね。まさに自分が「疑わなかっただけのふわふわした状態」で生きてきたんだなってのを意識したというか。震災前は「疑っていないという状態」にとどまっていたので、イコール「信じるという行為」に及べなかった。今はありとあらゆるものを疑った後だからこそようやく何を信じるか選べるようになったなと思いますし、そうすることが豊かさにつながるという実感があるからこそこういう歌詞が出てくるようになりました」

---トレイラーでも使われている『Louder Than War (2019)』も、前提のない中で怒っている人たちに「ほんとに怒ってるの?」という問いかけのように思えたんですが。



「そうですね、皮肉というか、何て言ったらいいんだろう・・・あの、感情の赴くままに決行することって実にたやすいけど、その点拳の下ろしどころがわからなくなっちゃうのが問題だと思っていて。特に今の時代はみんなが振り上げた拳の下ろしどころを探している気がして」

---ほんと今はそんな感じになってますよね。

「「キレる」って言葉にも同じような感情を持っていて。僕はこの表現にあまり実感がわかなかったというか、「キレた人」ってのをあんまり見たことがない気がする。昔からなんですけど、たとえばクラスメイトの誰かが「キレた」って言っていたとして、その「キレた」状態で怖い大人たちがたくさんいるところに放り込んでみたいって思うことがあって」

---(笑)。

「「俺はキレた!」っていう人に対して、じゃあTPOを選ばずにめちゃくちゃにやるお前を見せてくれ!って思うんですけど、ちょっと怖い先生が現れるとしゅんとなっちゃうというか。じゃあ「キレる」って何なんだろうって。「狂いたい」とか「変になりたい」とかって願望はみんなあると思うんですけど、なんだかんだ相手と場所を選んでるんだなあという寒さというか。それを越えちゃった人は奇人扱いされるわけで」

---はいはい。

「僕はの子くん(神聖かまってちゃん)のことが好きなんですけど、そのきっかけって、「ちゃんとしてる」って思ったことなんですよ。最初はおもしろさとか、怖いもの見たさで惹かれたんですけど、ステージ上で言ったことと真逆のことを楽屋でしていたり。それについて僕は全然嫌な気持ちはしなくて、逆に自分のやることをまっとうしている、つまり「キレている」ってことをお客さんの前で実行しているように思えて好きになりました。の子くんは、「俺はステージにはこういうモードで立つんだ」ってのを選び取ってるんだと思うんですよ。普段からおかしい人がそのままステージに立ったって、それは普段と一緒なんだから、あくまで「芸」としてはそれにお金払う必要ないですよね。まあ、面白かったらどちらでもいいんですけど」

---「選ぶか選ばないか選べ」ってのはすごく主体的な態度を相手に要求していると思うんですが、一方でこのアルバムには異なる価値観も同居しているように感じています。それは何かと言うと、主体的に選ばなくても「どうせみんな生きていくよ」「簡単には死なないよ」というメッセージもこめられているのかなと。たとえば「生きているのを忘れていても その心臓は止まったりしない(『Wire (Fahrenheit 154)』)」「彼を終わらせるものは 平板で単調で無個性な死だけ 苦悩でも悲哀でも不条理でも憎悪でもない(『Meursault』)」みたいな、別に選ばなくても何も終わらないんだっていう。この2つの考え方は、小林さんの中では矛盾しないものなんですか。

「「生きる」ということを「行為」としてとらえるのか「状態」として捉えるのか、という違いだと思います。たとえば「悲しみで死にそうになる」っていうある種ドラマチックな考え方だったり、「生きる意志さえあれば生きられる」っていう楽観的な考え方、もしくはその逆で「生きる意志を失ったら死ぬ」とか。もちろん「病は気から」っていうのは一理あるとは思うんですけど、気持ちだけで生きたり死んだりしたら人類半分以上いなくなってるんじゃないかと思って。心臓は自分が動かそうと思っているから動いているのではなくて、意志がなくても勝手に動いているという「状態」であって、それをどう豊かにするか、そのために何をするか、どうやって/何のために生きるかという「行為」に自分の意志が反映されていくのだと思います」

---なるほど。

「あと、一方で少し矛盾しているかもしれませんが、「何のために生きるか」と同じくらい「何に生きて何に死んでいくか」っていうことも価値のあることだと思っていて。自分はこのためだったら死ねると言って実際に死んでいく人がいたとして、それは「何に生きたか」っていうことを裏付けるものだったりもするので、「死」そのものが貧しい・欠落であるとはそんなに思わないんです。「自分は○○のために死にたい」って言って目を輝かせている人にそれは貧しいことだからやめろとは絶対に言えない」

---世の中的に「死」という概念は向こうに追いやられている、あまり考えるべきではないものとして扱われている感じはありますね。

「大切な人と会えなくなるからさびしいとか、おいしいものを食べられなくなるのは嫌だなとか、そういうのは確かにあるとは思うんですけど。幸せの絶頂にいる時に「今だったら死んでもいいと思える瞬間」って、僕はまだ味わったことないんですけど、もしそういうものがあったとしたら死ぬのにもってこいだとも思っちゃうんですよね」

---その辺の死生観の話も震災の後で変わったりはしてるんですか。

「そうですね、生きる/死ぬってことについてはずっと思考停止状態だったので」

---考えないですよね。僕も地震の後になってから、「あ、人っていつか死ぬんだな」ってことを日常的に考えるようになりました。

「僕の場合は震災以前の半年間で身近な人が亡くなることが度重なって、震災でノックアウトされたっていう部分があります」

---ここまでお話しされていた「死」と「生」が隣り合っている感じがアルバム全体に通底していると思うのですが、そういうシリアスなトーンが前面に出てきているのがアルバムの8曲目くらいまでで、その後のラスト2曲『Ceremony』『Flower of life』になると、一転して世界が開かれていくような印象を受けました。個人的にはアルバムを通して聴いていて最後2曲になるとすごく安心した気持ちになったんですけど、ラストで明るく終わっていくという構成は意識していた部分はありますか。





「そうですね、意識はしてます。アルバムを聴き終わった時に、何かしらの「豊かさ」が伝わるような仕掛けとして今回はこういう構成にしていますし、今後の作品でもきっとそういうことを考えていくと思います。問題提起とか問いかけとか皮肉とかいろいろ言っても、最後に何かしらの「答え」を用意しておくのが重要だなと。ラストの2曲は自分たちに対してもそうだし、未来とか子供とかそういうものに対して衒いなく素直に歌いました」

---まさに「子」という言葉が歌詞に登場することで、未来につながるイメージが強く伝わるなあと思いました。それと、『Ceremony』の「これでよかったんだ」っていう言葉が、最初に聴いたときからすごく印象に残っていて。『Ceremony』の前の曲あたりまでは聴いてて緊張感を強いられるというか、力を入れて聴く感じだったのが、あそこでああいう音とああいうメッセージが来ると、救われるというか気持ちが解放されていくような感じになったので、作品としてすごく良い終わり方だなと思いました。

「ああ、ありがとうございます」

---『Ceremony』っていう言葉なんですが、過去曲をやるイベントでもタイトルとして使われていますよね。ブログでも「ニューオーダーの曲のタイトルで」と書かれてたと思うんですが。

「はい」

---違ってたら申し訳ないんですけど、最後の『Flower of life』とニューオーダーの『Ceremony』の雰囲気が似ているような気がして。



「あー、はいはい」

---最後の曲に「ニューオーダーの始まりの曲」と似た雰囲気の曲を配置することで、ここからバンドが新しく変わっていくとか、この先新しいものが続いていくとか、そんなストーリーを勝手に妄想してたんですけど・・・(笑)。その辺どうですかね。

「ニューオーダーってところまでは考えてなかったんですけど、新しく物事が始まるとかバンドが歩いていくってのを示唆的に表しているのはおっしゃる通りです。そこまで感じていただけるとありがたいです(笑)」

---良かったです(笑)。

「『Flower of life』と『Ceremony』の曲順が逆のパターンっていうのもメンバーの中では議論として出たんですけど」

---あー、なるほど。

「『Ceremony』が終わりだとただ完結させるだけに過ぎないので、『Flower of life』が最後で、映画でいうとエンドロールで登場人物が駆け出して行って終わるみたいな(笑)、そんな感じになればいいなと」

---『Ceremony』で一区切りあって、最後に『Flower of life』があるのがちょっと後日談ぽくてかつ前向きな感じもするのがいいなと思いました。ニューオーダーと関連した話だと、ブログに書かれていた「レーベルが作るモノの品番1がポスター」っていうのがファクトリーを意識してたりとか、そのあたりのネタが盛り込まれているのが面白いですね。

「ありがとうございます、いろんな人にお会いしてるんですが初めて言及していただけました(笑)」

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司会者「前編はここまでです」

レジー「次回はこのアルバムの話から派生して、小林さんから見た最近のシーンについて、そういう中でTHE NOVEMBERSがどういうスタンスでどういう音を鳴らしていくか、ということについて掘り下げています。引き続きよろしくお願いいたします」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

レジー「と言いつつではありますが、次回更新は22日の予定です。それまでしばしお待ちください」

「アイドルブーム」を経て「かわいくて楽しい」が正義になった

レジー「cakesの連載「Perfumeとは「無重力アイドル」である」が無事全3回公開されました。読んでいただいた方ありがとうございました」

司会者「おつかれさまでした」

レジー「いやはや、ほんと大変でしたが無事日の目を見て良かったです」

司会者「アクセスも好調だったようで」

レジー「実数はまだちゃんと把握してないんだけど、デイリーだとホリエモンに次いでアクセス2位とかになってた」

司会者「ホリエモンの次ってすごいですね」

レジー「ね。しばらくそのネタ宣伝していこう。で、今回は最初にその連載のアウトテイクを載せたいなと。あの連載、ほんとは前編中編後編のあとに『LEVEL3』のディスクレビューをつけるはずだったんですよ」

司会者「そうなんですか」

レジー「レビュー自体はできてたんだけど、ちょっと行き違いがあって結局最終の原稿には載せなかったんだよね。せっかく書いたのでそれをここで公開させていただきます。もうあのアルバム出てから結構時間経ってるので今さら感はあるのだが。それではどうぞ」

---
Perfume『LEVEL3』

「かわいくてかっこいい」を同時に突き詰めるとこうなる





Perfumeの最新作『LEVEL3』の発売から、1か月以上が経過した。多くの雑誌の表紙を飾り、また様々なテレビ番組に出演するなど、グループとしての露出の多かった発売前後の期間をファンとしてとても楽しく過ごした。チャートでも当然のようにウィークリー1位を獲得し、Perfume人気がいまだ盤石であることが証明される結果となった。

『LEVEL3』購入後、何度なくこのアルバムを通して聴いた。「ドームでのライブを想定して作ったアルバム」というだけあってステージ映えしそうな曲が多く、パフォーマンスを見るのが本当に楽しみになってくる。ただ、そういった「単純に楽しい、かっこいい」という感触以上に自分が感じたのは、「これは今のPerfumeが出すべきアルバムとしてふさわしい作品だ」という圧倒的な説得力である。

本人たちもインタビューで語っている通り、今作は「フロア対応のダンスアルバム」である。より「聴き手に踊ることを要求するような」アレンジにチューンナップされた既発曲が立て続けに迫ってくる冒頭の展開だけでも、このアルバムが提供する音楽体験のインパクトの大きさを存分に体験できる。特に、『Magic of Love』に新たに加えられたイントロ(シングルバージョンにはイントロがなく、3人の歌いだし一発で始まる)を初めて聴いたときには深夜の自宅で思わず大きな声をあげてしまった。あーちゃんの言葉を借りれば「メロディアスかつドラマチックに変身した」この曲、イントロのフレーズがそのままボーカルのメロディと絡み合っていく展開はいつ聴いても気持ちが一気に高揚する。それゆえに次の『Clockwork』の抑制の効いたトラックが余計に心地よく響くわけで、思わず「中田ヤスタカいい仕事してるなあ」なんて上から目線の感想が口をついてしまう。

アルバムの中盤以降も、「とにかく盛り上がろう」というシンプルな歌詞とそのメッセージをそのまま音にしたかのような強烈なビートで構成された『Party Maker』や、「3人の声を単なる素材として使う」という贅沢な手法を駆使した『Sleeping Beauty』から海外展開におけるシンボル的な楽曲となっている『Spending all my time』へ続く流れなど、「ダンスアルバム」としての見せ場は随所にやってくる。もちろんこれらの楽曲もアルバムの聴きどころの一つではあるのだが、個人的には『Party Maker』からメロウな『ふりかえるといるよ』を挟んで続く『ポイント』『だいじょばない』の2連打をアルバムのハイライトとして推したい。それぞれシングルのカップリング曲としてリリースされていたこの2曲の流れには「強迫的な音でフロアをアッパーに盛り上げる」だけではないPerfumeの魅力、女性らしい繊細さやかわいらしさが詰まっていて、アルバム全体における重要なスパイスとなっている。





「ダンスアルバム」としての強度と女性らしいしなやかさの共存。今作の完成度は、前々作『⊿』でのダンス方面へのアプローチと前作『JPN』における等身大のPerfumeの魅力の伝達、それぞれに向き合ったからこそ生まれたものであり、彼女たちのディスコグラフィの流れで考えれば「今のPerfumeが鳴らすべき音」としてジャストである。そして「日本の女性としての良さを残しつつグローバル仕様のダンスミュージックで勝負する」という現在の路線は、彼女たちの世界戦略においてもその成果を最大化するための最適なアウトプットと言えるだろう。すでに各国の配信チャートでも好成績を収め、さらにはフィジカルでのリリース要望が殺到しているというのはその証拠として充分である。海の向こうでも着実に増えつつあるPerfumeの魅力に感染する人々に、このアルバムをライブで初めて体験できるのは日本だということを力いっぱい自慢したい。
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司会者「アルバムに続いて、新曲『Sweet Refrain』が早速リリースされます」



レジー「これ踊ってる長澤まさみかわいかったなあ」

司会者「「都市伝説の女」のエンディングですね。もう動画は削除されちゃったんでしょうか」

レジー「僕は放送されたの録画したからね。永久保存版ですわ」

司会者「cakesの原稿では「今のアイドルブームのきっかけを作った存在」としてのPerfumeにスポットを当てましたね」

レジー「特に前編ではそういう話をしました。そういや最近「アイドルブーム」的な言説が一時期に比べて減った気がするんだけどどうなんだろう」

司会者「殊更に持ち上げるようなムードは過ぎ去ったんですかね」

レジー「夏のロックインジャパンに続いてカウントダウンジャパンでもアイドルたくさん出るの発表されたけど、まあ既定路線だもんね。この辺りの流れはこちらの記事をお読みいただければ

司会者「前田あっちゃんの出演くらいですかね想定外だったのは」

レジー「さすがにびっくりしたけど、あれは「アイドル枠」っていうよりは「女優枠」で考えた方がいいと思うんですよ」




司会者「なるほど」

レジー「余談ですが2011年にgalaxias!で出た柴咲コウ超かわいかったよ」



司会者「見せ方を知ってますよね」

レジー「うん。そんなに前で見てたわけじゃないのにかわいさが伝わってきた。話戻すと、今年は「ポストアイドル戦国時代」なんて言われ方もしたけど、アイドルというものがブームから定着に向かっていく1年だったのかなあとか思いました」

司会者「「あまちゃん」もありましたしね」

レジー「そうそう、もう何か今「ご当地アイドル」とかってものが普通に認識されてるわけじゃないですか。NHKで毎朝あんなの見せられてたらそりゃ定着するよね」

司会者「そもそもはご当地アイドルとして出てきたNegiccoも今年は支持基盤を広げました」

レジー「そうね。アルバムも良かったし、ともすれば「使い捨て」みたいなこともあり得るアイドル界隈で長期戦を経て人気が出たのは素晴らしいなあと思いました。で、肌感覚でいうと、アイドルってもの自体が物珍しくてとりあえず盛り上がっちゃうみたいなムードはもう終わったんじゃないかな。「アイドル聴いてる俺かっこいい」的なやつもさすがにもうワークしないでしょ。まだいるのかなそういう人」

司会者「ただ普通に良いものは良いって感じで受け入れられていく感じになるといいですね」

レジー「バンドものだっていいものがあれば悪いものもあるわけで、まあそういう当たり前の状況に向かっていくだろうし、その中で淘汰も進んでいくんじゃないかなあとも思います。で、ちょっと最近気になってるのは、「アイドルブーム」みたいなものがあったことによってその周辺にも影響が出ているんじゃないかなと。たとえばちょうどtofubeatsがメジャーデビューしましたけど、彼の注目度の高まりの要因の一つとしてアイドルシーンにおけるポジションの確立ってのはかなり大きいと思うんですよ」

司会者「リリスクのアルバム素晴らしかったですね」



レジー「それもそうだし、マルチネと女子流の絡みだったりとかもね」

司会者「メジャーデビュー盤では森高千里とコラボしてます」





レジー「これも流れとして完璧だなあと。森高千里って、「アイドル」の概念を拡張した存在でもあると思うんですよ。楽器もやって曲も作って、でもアイドル的なスター性は手放さなかった人。そういうある意味では「歴史上の人物」なわけで、そんな人を今のシーンのキーパーソンであるtofubeatsが担ぎ出して作ったこの曲ってのはなんか「アイドルブーム」への「トドメ」みたいな感じがしたなあ。一回区切りを作ってしまったような気が」

司会者「なるほど」

レジー「あとちょっと違う切り口でいうと、アイドルの一番根源的な素晴らしさって「女の子たちが歌って踊ってるのは可愛くて楽しい」みたいなプリミティブなところだと思うんですけど、わりとそういう快感原則に忠実というか、そういうの衒いなくやっちゃう感じがアイドル以外のところでもぽこぽこ出てきてるような気がするんですよね。僕最近Shiggy Jr.の『Saturday night to Sunday morning』がもう死ぬほど好きで毎日聴いてるんですけど」





司会者「ツイートしまくってますよね」

レジー「宣伝せずにはいられない。この方たちのルーツとか全然知らないんだけど、これも「アイドルブーム以降の音」って感じがするんだよね。なんかアイドルブームを通過したaiko、みたいな」

司会者「あー」

レジー「個人的な印象として、こういう「とにかくポップで可愛くて楽しい」みたいな音って、渋谷系的なギターポップが消費されつくしたあと一時下火になってた気がするんだけど、アイドルが流行る中でこういう感じの音が見直された側面があるんじゃないかなと思うんだよね。どうなんだろうか」

司会者「そういう文脈のピークポイントとして去年トマパイのアルバムがあったとも言えるんですかね」



レジー「ねえ。で、アイドルからちょっとずれてアニメ周辺を見ると声優の人たちのそういう音のアルバムが出てたり。僕は花澤香菜しか聴けてないんですけど。あと『ドラマチックマーケットライド』も今年でしょ。これいい歌だよなあ」



司会者「インスタントシトロンの片岡知子さんの作曲です」



レジー「アニメ周りは完全素人なので迂闊なことは言えないんですが、アイドルとかアニメとかある種「周縁」とされていたジャンルでの動きが「本流」のポップスシーンに影響を与えてる部分がすごくあるんじゃないかなあと。まあもはや「周縁」も「本流」もクソもないってことなのかもしれないけど。最近すごく評判の良い住所不定無職のアルバムなんか、こういう流れが全部合わさったところにある作品なんじゃないかと思う」





司会者「メンバーがハロプロ好きだったりするみたいですね

レジー「なんかそうやっていろんな鉱脈がつながってて面白いなあと思います」

司会者「ではぼちぼちまとめていただきたいのですが。Perfumeの話から「アイドルブーム」が残した影響みたいなものについて話してきました」

レジー「そうですね、ここまでの解釈が妥当かわからんけど僕の中では一本の線できれいにつながってるんだよなー。共感してもらえる人がいたら嬉しいです。で、僕がアイドル好きなのって、もちろん女の子が好きってのもあるけどやっぱり「楽しいポップソング」が多いからなんですよ。そういう魅力が、ジャンルの壁を飛び越えてどんどん広がっていったらいいなあと思います。あ、住所不定無職については竹内正太郎さんのアルバムレビューが超かっこよかったのでぜひ読んでみてください。今回はこんな感じで」

司会者「わかりました。では次回はどうしますか」

レジー「次はちょっと特別編になりますね。近々予告があると思いますのでしばしお待ちください」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」
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